「宮廷料理人ヴァテール」で絢爛豪華なフランス料理の源流を知る「ブリア・サヴァラン」や「エスコフィエ」の名前は知っていても、「ヴァテール」をご存じの方は少ないのでは?
16世紀、フランスの宮廷料理として発展したフランス料理ですが、17世紀、ルイ14世の時代、
ソムリエの原形を生み、クレームシャンティイ(
ホイップクリーム)の創作など、現在に続く偉業を成したのが、
フランソワ・ヴァテール。
これは、コンデ公爵の元で料理長を務める彼が、ルイ14世と一族を招いた大饗宴を仕切った3日間を描いた映画です。
「宮廷料理人ヴァテール」(2000)監督: ローランド・ジョフィ
歴史に残る豪華な饗宴で、山海の食材が国中から集められ、噴水、花火、氷の彫刻、宙づりのゴンドラで歌姫が歌うなど、壮大なスペクタルが展開されます。
創造力溢れるヴァテール(
ジェラール・ドパルデュー)に好意的な女官アンヌ・ド・モントージエ(
ユマ・サーマン)は、彼女に横恋慕するローザン侯爵(ティム・ロス)を通じて、国王から
「あなたとショコラを飲みたい」と誘われます。それは、一夜をともにする合言葉でした。
コンデ公の痛風治療に小鳥の心臓が必要なため、アンヌのカナリアが没収されそうになったのを、自分の愛鳥と引き換えに助けるヴァテール。厨房を訪れ、彼に「なぜ助けてくれたの? 」と迫るユマ・サーマンの眼技が麗しい。禁断の一夜を過ごす二人。
運悪く国王に呼ばれアンヌが駆けつけると、陛下はおらず、ローザン侯爵が「どこにいたか知ってるけど黙っててあげたよ。陛下に知れたらヴァテールは破滅。僕、あなたとショコラを飲みたいな」と。意外な結末を迎えますが、料理人の命がけの真摯さに心を打たれるでしょう。