上質な光沢感と品格、日本の美「漆」を暮らしに取り入れる
漆器は、英語でJAPANと称されるように、日本美を象徴する工芸品。輝きを放つのではなく輝きを内包した光沢感が、器に上質さや品格をまとわせている気がします。
「江戸な日用品」(平凡社)/撮影・喜多剛士
江戸初期までは貴族や大名の道具であった漆器ですが、江戸時代中期には一般市民にも普及。各藩では、漆工芸を奨励。江戸以前より産地だった、輪島、山中、越前、飛騨、会津などは、より漆工芸が盛んになります。
日本橋のたもとにある
「黒江屋」は、元禄二(1689)年に創業の漆器店。徳川家や諸大名の御用達だったという黒江屋では、数百万は下らない蒔絵の文箱や作家ものの茶道具を見ることができます。とはいえ店内にならぶ漆器の多くは、今の暮らしに気軽に取り入れられるもの。
普段使いの漆器を提案する老舗「黒江屋」にて漆器の良さや選び方を教えていただきました。
特別な日やお祝いごとに使われる蒔絵が描かれた漆器。
まず器の生地には、
木製と
木粉樹脂製があります。丈夫なうえに厚みがあるので修理が可能な木製漆器。木製(くり抜き)加工で作れないデザインや軽さが持ち味の木粉樹脂製漆器。一般的には、木製よりも木粉樹脂の素地のほうが、価格はお手ごろです。ただ、塗りの回数や工程の複雑さによっては、木粉樹脂が高いことも。どちらにも良さがあるので、使い方にあわせて選んで欲しいと言います。
また木製の漆器の良さは、熱伝導率が低いため、熱いものをいれると冷めにくく、冷たい氷水をいれると氷が溶けにくく水滴がつきにくいこと。さらに抗菌効果が高いため、昔から料理を重箱に詰めるのは理にかなっていたとか。
「江戸な日用品」(平凡社)/撮影・喜多剛士
はじめて漆器を選ぶ場合には、産地や価格の比較ができる
専門店を訪ねてみるのがおすすめ。自分で使う器ならばお好みで決めればいいけれど、贈り物にする場合には
決まりごとがあるのでプロにご相談を。また生地が木製か木粉樹脂は、一見するだけではわかりにくいもの。だからこそ、そんなことまできちんと話してくれるお店ならば安心ですね。