■春の「余韻」
「ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は」
穂村弘(『ジンケート』)
冷蔵庫をあけると卵を置くための独特の空間があります。あのくぼみにひと粒ずつ涙が落ちていきます。ぬるくてしょっぱい涙も落ちてしまえば、もう誰のものなのかわかりません。「ほんとうにおれのもんかよ」と、つきはなしているのは自分自身なのか、それともまた別の誰かのことなのでしょうか。悲しい場面に悲劇的にならず、ちょっぴり投げやりにうたう技法は上級者ならではのテクニックです。
「音楽になる一歩手前のまっさらな風だけが吹いてゆける市街」
井辻朱美(『コリオリの風』)
風は、やがて音楽にかわるのでしょうか。急激にあたたかくなる春は風が強い季節。まっさらな、洗いざらしの木綿のような風がかなでる名曲に耳をすませてください。
歌人たちはうたいます。きびしい寒さにたえて芽吹く木々の生命力を。まぶしい青空を。光と風を。そして、永遠にもどらない現在という、その一瞬を。
春を詠んだうた。春に読みたいうた。春は、ドラマがはじまる季節です。
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