南青山にあるお洒落なジュエリーショップ、アンジェリーナ表参道のオーナーデザイナーである篠田恵美さんは、25歳でアンジェリーナを立ち上げた後、28歳で結婚し、年子で男児を出産。
それだけでも多忙なのに、2002年、脳外科医のご主人のアメリカ勤務に伴い、
乳飲み子二人を抱えて渡米したというパワフルなワーキングマザーです。
しかもアメリカ滞在中、さらにジュエリーを探求するため、当時まだ日本に定着していなかったクリスタルヒーリングやセルフイメージ心理学を学び、帰国後、“願いを叶えるジュエリー”をコンセプトに、パワーストーンとは一線を画した、豊かなライフスタイルのためのパートナージュエリーのデザイン・制作をスタート。
美しく女性らしい外見からは想像できないエネルギッシュな彼女から、血反吐を吐くような想像を絶する大変さだったという
在米での子育ての苦労話、そして、仕事も育児も人間関係も、すべてを回していくために大切な
生き方のエッセンスを伺います。
■子育てには “この時しかできないこと” がある
学生時代からおつきあいしていた男性と結婚し、31歳、32歳と続けて男児を出産した篠田さん。子供たちが
1歳と半年ほどのまだ赤ちゃんの頃、渡米することを決心します。
―― よく乳飲み子を二人連れて、アメリカへ行こうと思われましたね。
「いくつかの理由があります。アンジェリーナを始めた1990年代は、カラーストーンでファンタジックなデザインが時代に合っていて、ファッション誌にもたくさん取りあげられていたのですが、世紀末になると、プラチナにダイヤだけのシンプルなデザインが流行りだして、どうしたらお客様に本当に喜んでいただけるジュエリーを制作出来るのかヒントが欲しくて 勉強し直したいと思っていました。
それと、当時、ハリウッドの名女優たちにライフスタイルについてインタビューをするという
『デブラ・ウィンガーを探して』(監督:ロザンナ・アークエット/2002年)というドキュメンタリー映画がありました。そのなかで
ジェーン・フォンダが、『人生で後悔してることはありますか?』との問い対して、『1番後悔しているのは、子育てを人任せにしたこと。
子育てについては後回しにすると取返しがつかないことがある』と答えていたのが印象的だったんです。
経営者の集まりなどに出ると、一部上場企業のキャリアを積んだ女性経営者の方とかカッコいいんですけど、高校生のお子さんとコミュニケーションが上手くいかず悩んでいたりして…。それを見て、やっぱり幼少期こそが大切だから、腹をくくるべきであろうと。
優先順位を考えた時、デザイナーとしての仕事の情熱がトーンダウンして、子供二人との時間を犠牲にしてまでこの仕事を続ける意味が見えなくなっていて。お店は信頼できるスタッフに任せられる状況だったので、思い切って行く選択をしました」
―― ご主人の単身赴任という選択はなかったのですか?
「当時の悩みは、仕事を続けながら2人の子供をたて続けに授かったことが思った以上に大変だったこと。想像を絶するめまぐるしさで、子育ての楽しい話を聞くと羨ましいけれど、私はもうそれどころじゃない。
そのなかで、本当に自分がどうしたいか見極めなきゃいけないけれど何も見えなくなってしまいました。今までの環境から離れて考えるのもいい機会かと、アメリカでなくてもよかったんですが、飛び込んでみようって感じでしたね」