■家事にあらわれる「自分の生きている目的」
家事の目的は、表面的には家をきれいにして気持ちよく過ごす、ということですが、それだけではないことが伊豫部さんは取材をしながらわかってきたそうです。
「小さな家事ワザも、ひとつずつやっていくことで、少しずつ自信がついていくんですよね。暮らしはいつでもグチャグチャになるし、それをリセットしながら生きていかないといけない。
そんななかでも、やるべきことをひとつでもやっているという自信があると、主婦として、または
生活者としての最低限の誇りのようなものが持てて、気持ちもラクになるんじゃないかなと思います。
それからやっぱり、
“誰かのために何かができる”というのが、家事のいいところだと思います。スーパー主婦たちは、最終的には人のために、ということを見すえて家事をしています。
家事を合理的にやって、労力やお金、時間を浮かせて、それをちょっとだけ公共のためにまわす。毎月、友の会として公共費を積み立てていて、東日本大震災のときはそのお金を使っていち早く支援活動をしていました」
伊豫部さんも毎月一定額を家計の「公共費」として、動物愛護の団体に寄付しているそうです。
そうすることで社会とつながっていると感じることができるといいます。
「もちろん、お子さんのため、家族のためということでも同じだと思うんです。家族も社会の一員として働いていたり、がんばっていたりするので、結果的に社会に還元して、社会とつながっていくことになると思います。
そういうふうに “誰かのために” と思って家事をやるのと、単に “10円得するために” やるのでは、生活者としての誇りがちがってくるはず。
自分がなんのために毎日がんばって生きているのかということも、なんとなく見えてくると思うんですよね」
■家事を考えれば「自分の人生をどうしたいか」が見えてくる
番組や書籍で紹介されている家事ワザはどれもすぐに実践できることばかりですが、慌ただしい日々のなかで継続するコツはあるのでしょうか?
「最近は、別に続かなくてもいいのかな、と思うようになってきました。私も一時期、スーパー主婦のように、完ぺきな状況を理想にして、できていないとかなり落ち込みましたが、いまはできるときに
自分にあった家事ワザを実践していけばいいんだと思っています」
伊豫部さんは、書籍の前書きで「生き方が変わって大きく幸せになりました」と書いていますが、スゴ家事術を実践するようになって、「自分がどう生きたいのか」という本音の部分がわかってきた気がするそうです。
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「番組を制作していても、自分でできる家事ワザもあれば、できないものもある。
すべて完ぺきにやろうと思わないほうが、自分が見えてくると思います。
どれくらいきれい好きなのか、どれくらい料理を自分でしたいのか、どれくらいおいしさにこだわるのか…そんなこともわかってきました。
人生は何かを選択することの繰り返し。すべてをやることは難しいので、優先順位が常に大事になってきます。優先順位を決めるには、自分がどう暮らしたいかが見えていないと選べません。自分を見直すときに自己啓発本を読むのもひとつの方法ですが、家事をやるということも意外といいきっかけになります」
一番身近な家事をどうしていきたいかを考えることが、
自分の暮らしや人生をどうしたいか決めることにもつながっていきます。自分がどうしたいかわかれば、がんばりどころや
手の抜きどころもわかってくるでしょう。
書籍には、このほかにもさまざまな家事ワザがイラスト付きでたくさん紹介されています。さらに、家事がもたらす変化についても詳しく書かれていて、「家事が苦手」という人も読んでいるうちに道がひらけてくるはず。
子育てママはなにかと悩みの連続の日々だと思いますが、まずは一番身近な家事を変えることで、自分も家族ももっと気持ちよくなる暮らしをはじめてみませんか。
参考書籍:
『NHK「あさイチ」スーパー主婦のスゴ家事術』
伊豫部 紀子/主婦と生活社(1,200円+税)
NHK「あさイチ」の人気コーナー、「スーパー主婦」たちの驚きの家事ワザをたっぷり紹介した一冊。苦手な家事が劇的にラクに楽しくなるだけでなく、自分のことが好きになる、キレイになる、家族関係が改善する、仕事の悩みが解消する、生きていく希望が見つかる、家事を変えると人生も変わる…といいことずくめ。番組では紹介できなかったワザ&最新ワザもイラスト付きでたっぷり収録されています。
伊豫部紀子(いよべのりこ)
埼玉県生まれ。立教大学文学部卒業後、ナレーターを目指すが成り行きで番組制作会社に入社。ドキュメンタリーや科学番組・情報番組・報道番組を手がけ、1996年よりフリーディレクターに。2000年よりNHK「生活ほっとモーニング」の生活情報紹介や著名人のインタビューに取り組んだ。
番組が「あさイチ」に変わるのにともない「スーパー主婦直伝」を企画して立ち上げ、人気シリーズとなる。
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