『メアリと魔女の花』を徹底取材! 米林監督の乙女心の表現力はあの少女マンガからだった【前編】
『借りぐらしのアリエッティ』(10)や『思い出のマーニー』(14)の米林宏昌監督が、スタジオジブリを退社後、新天地・スタジオポノックで手がけた映画が、『メアリと魔女の花』です。7月8日(土)公開の本作の全貌がようやく明らかになりました!
(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会
本作の主人公は明るくて天真爛漫だけど、自分の赤毛にコンプレックスを抱えた少女メアリ(声優:杉咲花)。ある日、メアリは森で7年に一度しか咲かない魔女の花「夜間飛行」を手に入れたことで、不思議な力を身につけ、そこから大冒険へと繰り出します。
本作は“静”ではなく“動”。冒頭からいきなりクライマックスのような怒涛の展開で心を鷲づかみ! 空を縦横無尽に飛ぶスリリングな飛行シーン、イマジネーションあふれる魔法の数々、メアリと少年ピーターの友情のドラマや成長劇など、新たな米林ワールドが全開です。
スタジオジブリファンのみなさん、ご安心ください。米林監督がジブリのDNAを引き継ぎながら、スタジオポノックの顔として挑んだ勝負作は、冒険ファンタジーのツボを押さえた快作に仕上がりました!
興奮冷めやらぬ今、本作を手掛けた米林監督にインタビューし、制作裏話はもちろん、宮崎駿監督、高畑勲監督への感謝の思いについてもたっぷり語ってもらいました。
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■乙女心がわかる監督が愛読していたのはあの少女漫画
『思い出のマーニー』の公開後、スタジオジブリの制作部門は解散。
その後、同作で組んだ西村義明プロデューサーが立ち上げたスタジオポノックで、『メアリと魔女の花』は産声を上げました。米林監督は「本当に苦しい作品でした」と穏やかな表情で言葉をかみしめます。
「スタジオジブリにいる時は、たくさん優秀なスタッフ陣がいましたが、それを1から集めなければいけなかったので、制作は遅れに遅れました。しかも活劇だったので枚数もかかる。でも、内容は手を抜きたくなかった。本当に大変で、なんとか完成できたのは、いろんな方々のおかげだと感謝しています」
それにしても米林監督は男性なのに、前2作同様、思春期の少女の心のゆらぎを丁寧にすくい上げています。なぜこんなに乙女心がわかっていらっしゃるのか?と聞いてみると「少女漫画で育ったからだと思います」と言われ、大いに納得。
「妹が買っていた『りぼん』をずっと読んでいました。
中でも池野恋さんの『ときめきトゥナイト』が好きでしたし、『耳をすませば』(柊あおい)もリアルタイムで読んでいました」とのこと。なんと、そういうことでしたか。
■メアリの顔に影を入れた理由とは?
魔女の服といえば黒色の印象が強いですが、メアリは赤色ベースです。ピンクの衣装もよく似合っています。
「アリエッティもそうでしたが、自分の気持ちをどんどん前に進めていくような主人公なので、赤やピンクなどの暖色系の色が合うだろうと思いました」
今回、目の上に影がある点は、『千と千尋の神隠し』や『借りぐらしのアリエッティ』など、ジブリ作品でおなじみの作画監督・稲村武志のこだわりでした。
「今回新しい部分を入れていこうかなと。高畑勲監督が手がけたテレビアニメ『赤毛のアン』のアンの顔にも影がありましたが、西洋人の顔は彫りが深いから影ができるんです。また、今回は髪の毛もかなり立体的に描きました」