お父さんのリアルな家庭問題とは? 娘を持つ父親必見『幼な子われらに生まれ』
© 2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
重松清の原作を映画化した
『幼な子われらに生まれ』は、DV、離婚同士の再婚、女性のキャリアと出産、育ての親と生みの親といった、日本ではもうめずらしくなくなった社会と家族の問題が絡みあい、もつれあいながら物語が進んでいく。
本作でのキーワード“家族”には、さまざまな社会的テーマが内包されている。そのなかで、自分がもっとも強く感じたポイントをひとつあげるとすれば
“父の存在”だ。
■娘のいるお父さんが、深く肩入れする物語
© 2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
田中麗奈が演じる奈苗は、DV被害に遭い、その夫と離婚後、
浅野忠信扮する信と再婚。その奈苗の元夫で暴力を振るった張本人、子どもにも愛情を抱けず家庭に不向きと自分で判断した
宮藤官九郎扮する沢田。彼らの実の子で小学6年生という微妙な年ごろを迎えた薫。
この家族をとりまくどの登場人物に肩入れするか、もしくはどの問題に興味を抱くかで、まったく違った風景が見えてくる。なかでも浅野忠信が演じる信の在り様は、子どもを持つ父親、もっといえば
娘のいる父親こそ感じる部分が多いといっていいかもしれない。
彼は普通のサラリーマンで、妻と、小学校6年生の薫とその妹の恵理子と暮らしている。ただ二人の娘は、信の実の子ではなく、妻の連れ子だ。
再婚して4年、なんとなく家族関係が築けたころ、奈苗の妊娠が判明。
うれしくないことはないが、二人の娘のことを考えると、彼は複雑な気持ちにならざるえない。また、彼には前妻との間にも沙織という娘が。定期的に実の娘と会う機会をもっていることも、連れ子である娘たちへの引け目へとつながっている。
だからといって間違ったことを子どもがすれば、きちんとしかるし、注意もする。良き父でありたいとは思いながらも、必要以上に遠慮すれば溝ができることも、愛情も伝わらないことも承知している。
子どもへの向き合い方は仕事へのスタンスにも表れ、残業して昇格するより、必要以上に残業をしないで、子どもとの時間に当てるのを選ぶタイプ。実際、彼は降格人事ともいえる出向のうわさ話が出てきたとき、“働けて同じような給与をもらえれば仕事はなんでもいい”と打ち明ける。結果、かなり理不尽な職場へ出向となるが、どこか受け入れているふしがある。
良い意味で、自分らしい生き方を模索し、対外的なことや他人の評価といったことはあまり気にしていない。周囲の目はどうでもいい。要は、内情さえよければ問題ないのだ。