©2017 Twentieth Century Fox
『アメイジング・スパイダーマン』の成功でスター監督となったマーク・ウェブが手がけた
『gifted/ギフテッド』は、ひと言で言えば感動のファミリー・ドラマ。
ただし、われわれ、大人にとってはちょっと痛いところを突かれる作品になるかもしれません。なぜなら7歳の主人公である少女の姿をとおして、親と子どもの関係性についてさまざまな問いが投げかけられるからです。
■わが子が“ギフテッド”だったら…
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タイトルの
“ギフテッド”とは、生まれつき平均よりも高度な知的能力を持つ人および、その能力のことを指します。また、その能力の持ち主ですが、すべての分野に秀でているのは少数で、ひとつ突出した才能をもっているタイプが多数を占めるそう。
ここに登場するメアリー(マッケナ・グレイス)は生まれながらの
数学の天才。じつは彼女の母親、ダイアンも数学者でした。しかも、世界が注目するほどの高頭脳の持ち主。数学の世界においてある偉業を成し遂げるであろうと将来を嘱望されていましたが、メアリーが生まれて間もなく、ダイアンは自らの命を絶ってしまいます。
残されたメアリーをダイアンの遺言で託されたのは、叔父のフランク(クリス・エヴァンス)。
“普通の生活を送ってほしい”とのダイアンの願いをくみ、フランクは大学教授の職を捨て、ボート修理で生計を立てながらの慎ましい生活環境の中で男手ひとつでメアリーを育てていきます。
ところがそこに縁をきったはずのメアリーにとっては祖母、フランクにとっては母に当たるイブリン(リンゼイ・ダンカン)が出現。メアリーに数学の天賦の才があると知った祖母は、財力にものをいわせて孫娘に最高の勉学の環境を与えようと親権を巡ってフランク相手に裁判を起こします。はたして、メアリーの運命は?
■それは子どもの可能性? それともエゴ?
この作品で親世代として、深く考えさせられることが、子どもへの期待について。さらに踏み込むと、「子どもへの期待が、ときとして
子どもの可能性を奪うことにならないか」ということです。
多かれ少なかれ親はわが子に期待をかけるのではないでしょうか? 最初は「元気にさえ育ってくれたらいい」ぐらいのレベルだったはずが、次第に
親の願望が出てきてしまうもの。
いつからか何か可能性があるのではないかと、いろいろな習い事に通わせてしまう。少しでも良い教育を受けさせたいと勉学に関することならお金を惜しまなくなる。これらは子どもの可能性をひろげるための親心ではありますが、
期待の裏返しでもあります。
そのことを否定はしません。ただし、子どもにだってやはり向き不向きがある。そこを無視して“あなたならできる”と叱咤激励するのは、はたして本当に子どものためなのか? そこには
親のエゴが入っていないか? 作品では、イブリンの行為をとおして問いかけます。
■なしえなかった夢を子どもに押しつける罪深さ
そのイブリンですが、じつは彼女自身も数学の天才だったのです。ただし、家庭に入ることでその才能を存分に発揮できないまま終わらせてしまった過去を持っています。その夢は娘ダイアンへと引き継がれ、ダイアン亡き後には孫のメアリーへ引き継がせようとします。
なによりも数学を学ぶことを重視するイブリンは、メアリーに最高の数学教育とそれを学ぶ環境を与えたい。それ以外は邪魔でムダとばかりに、排除しようとします。
それに対し、フランクは異を唱えます。でも、イブリンは聞く耳をもちません。
自分としては孫娘メアリーのためをおもって、良かれと思ってやっている思いが強い。自分のやり方が正しいと信じて疑わないのです。しかし、ラストでイブリンは子どもへの
過度の期待が自らに大きな代償となって跳ね返ってしまうことに気づかされるのです。
このイブリンの払った代償について、親は深く考えさせられることでしょう。また、
子どもだってひとりの人間で、きちんと自分がある。それを所有物のようにしてしまうことの罪深さをあらためて目の当たりにするのではないでしょうか。
■子どもが生き抜くために親がすべきことは?
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本作が気づかせてくれる重要なことは、ともすると忘れがちになる親として
「子どもにすべきこと」です。ごく普通の小学校に通い始めるメアリーですが、天才ゆえ通常の学習はつまらない。クラスメイトも“幼稚で付きあってられない”とちょっとバカにしてしまうところがあります。また、自分を子ども扱いする先生にも反抗的な態度をとりがち。
ただし、それをフランクはひとつひとつ諭していきます。“世の中にはいろいろな人がいる。自分は人より秀でているからといってすべてが思いどおりになるわけではない。人を見下してはいけない”と語りかけているかのように。
そして、気づくと数学のことしか考えなくなるメアリーを外へ連れ出し、自然と触れ合う時間をもとうとします。
“勉強だけが人生じゃない。世界は広い。人生には楽しいことがいっぱいあるのだ”と伝えるかのように。
とかくいまの時代、わが子かわいさゆえ、誤ったことがあってもその要因を別に求めがち。ついつい“うちの子に限って”と思いがちではないでしょうか? 親として事実を把握して、きちんと子どもと向き合うときがある。この世界をきちんと見せる。そのことの大切さをこの映画は教えてくれます。
いっけんすると普遍的な家族ドラマですが、細かく目を向けるとひとりの親として考えさせられるシーンに次々と出くわします。とくにメアリーと同世代の子どもをもつ親御さんには感じるところが多いと思う作品になっています。
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