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『コウノドリ』第10話が12月15日に放送された。描かれたのは、出生前診断を受けた2組の夫婦。
サクラ(綾野剛)をはじめ、ペルソナメンバーが「命とは何か」という繊細なテーマについて向き合った今回。どんな選択をしても、そこには事情と葛藤がある。命は尊いが、きれい事ではない。物語をとおして私たちの心に届いたメッセージは、とてつもなく大きなものだった。
■出生前診断を受けた2組の夫婦の決断
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義両親に勧められ、新型出生前診断を受けた高山透子(初音映莉子)のもとに、検査結果の封書が届く。結果は「21トリソミー(ダウン症候群)陽性」。検査を受けた病院に連絡するも、「あとは患者さんのほうで専門の病院を探して受診してください」とあしらわれてしまう。
ペルソナを訪れた透子は羊水検査を受けるが、やはりダウン症との診断。出生前診断を何気なく受けた透子は、その結果に戸惑うばかりで、どうするべきかと答えを出せずにいた。
かたや出生前診断を受けたもう1組の辻明代(りょう)は、結果が陽性ならば胎児は諦めると決めたうえで、診断に臨んでいた。中絶を希望する理由は、明代がおなかの子どもの世話にかかりきりになれば、夫婦で営む弁当屋を続けられず、生活が成り立たなくなるから。上には4歳の娘もおり、自分たちの死後、娘に負担をかけるわけにはいけないという思いもあった。
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陽性という結果を受けた明代はカウンセリングを受けるが、決意のままに堕胎。激しい痛みに耐えながらも、明代は赤ちゃんを抱きたいと望む。処置を終え、赤ちゃんについて「すごく小さくて。でも、温かかった」と、小松(吉田羊)に見せた大粒の涙には、明代のさまざまな思いが詰まっていた。命を無下にしたわけではない。命と真剣に向き合い、悩み抜き、下した決断だったのだ。
一方、透子も夫や両親から「諦めたほうがいい」と説得され、中絶することを決意。だが、処置室を前にした透子は、涙を流して座り込む。
「私の赤ちゃん、産みたい。でも、怖い自信がない。でも…」と。おなかの赤ちゃんは、3年の不妊治療の末に授かった命。そんな透子を実母は抱きしめ「大丈夫。あんたがへばっても、母さんが一緒に育てる」と寄り添うのだった。
■育児はきれいごとではない
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従来のドラマであれば、検査結果が陽性でも「やっぱり産みたい」と結論づける。もしくは、「どんな子どもでも受け入れたいから出生前診断は受けない」…というように、「産むことが正しい」と偏った内容になりがち。
でも、この物語は違った。
たとえ中絶という選択を選んだとしても、
「命の選別。その言葉にみんながとらわれてしまっていて、お母さん、お父さん、家族、その事情には目が向けられていない。それぞれの事情の上に、命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ」というサクラの言葉にあったように、「陽性だから産みません」と簡単に割り切れることではなく、必ずそこには苦悩や葛藤がある。
ドラマを観て、「自分だったらどうするか」と考えた視聴者も多いだろう。実際、筆者も考えてみたが、「わからない」という答えにしかたどり着くことができなかった。女性であれば、おなかに宿った命を「産みたい」と思うのは当然のこと。
胎動が感じられるなど、わが子としての愛情が高まっている時期ならなおさらだ。
けれども、育児はきれいごとではない。産む道を選べば、乗り越えなくてはいけない課題がたくさんある。だが中絶すれば、一生自分を責め続けることになるかもしれない…。サクラの「
どんな選択をしても、後悔することはあるんだと思います」という言葉は的確で、とても重いものだった。そして、そんな選択を迫られた夫婦が悩み抜いて出した決断について、批判する権利なんてだれにもないのだと感じざるを得なかった。
■『コウノドリ』×『逃げ恥』がコラボ!?
物語とは関係ないが、『コウノドリ』にはキャストが出演してきた過去の作品にまつわるさまざまな小道具が隠されていることが、ファンの間で話題となっている。
そして、第10話で電子レンジの上にさりげなく置かれていたのは「とぐろターボ」(らしきもの)。
これは、年末年始に一挙再放送が決まっている『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で、平匡(星野源)が日野(藤井隆)からもらったマムシエキス。
みくり(新垣結衣)と共に出かけた新婚旅行(社員旅行)先の旅館で、平匡が必至で隠そうとしたファンの間ではおなじみのアイテムである。繊細なテーマを真摯(しんし)に描く傍らで、こんな風に遊び心を入れ込むスタッフのおちゃめさには、思わず笑ってしまった。
『コウノドリ』は、次回ついに最終話。出産を決めた透子に寄り添うサクラ。そして小松の親友・武田(須藤理彩)も出産を迎えるが、母体の容体が急変してしまう。
四宮(星野源)、白川(坂口健太郎)、小松らの今後も気になるが、予告には新生児科医・新井(山口紗弥加)と、育休から復帰した助産師・角田(清野菜名)の姿も映し出されるなど、ますます目が離せない。『コウノドリ』第11話(最終回)は、12月22日夜10時から15分拡大放送。
TBSテレビ 金曜ドラマ『コウノドリ』
金曜よる10時から
「何もかも最高」「こんな泣くと思わなかった」シリーズ完結『ヴェノム:ザ・ラストダンス』週末興収初登場No.1