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いよいよ最終週を迎えた朝ドラ
『わろてんか』。葵わかな演じる主人公てんは、妻、母、夫亡きあとは寄席チェーンの女興行師として「どんなにつらいときでも、笑って乗り越えていく」をモットーに、凛として生きてきました。
舞台は明治から昭和初期の戦争時代。特に後半は、普通に生きていくこと自体が厳しい戦下の激動期です。愛する夫・
藤吉(松坂桃李)と抱いた「笑いのビジネスを成功させる」という目標がようやく達成されたかに思えたのに、なんとまたふりだしに戻りそうな怒とうの展開に!
それでもなぜ、てんは希望を失わず、前進し続けることができたのでしょうか? てんの半生をふり返ってみると、夫との愛と夢に腹をくくった生きざまが見えてきました。
■松坂桃李に添い遂げる覚悟。高橋一生の役回りは?
愛する藤吉(松坂桃李)と、両親の反対を押し切って駆け落ちしたてん。そのときてんは、母・しず(鈴木保奈美)から喪服を受け取ります。
「貞女は二夫に見えず」を物語る白い死に装束は、
「愛した人には一生添い遂げる」という覚悟の象徴でした。
しずによると、それを縫ったのは祖母のハツということで、おそらく藤岡家の女たちは、もともとそう刷り込まれて育ってきたのかもしれません。
実際、てんの父・儀兵衛(遠藤憲一)としずも
夫唱婦随(ふしょうふずい)を画に描いたような夫婦でした。すなわち腹をくくり、愛した人に一生ついていくこと。それは『わろてんか』が一貫して描いたテーマでもあり、その愛の力で人生が切り開かれていきます。
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てんの息子・隼也(成田凌)がつばき(水上京香)と駆け落ちするというくだりも、そのテーマの反復です。じつは隼也も、母てんや父・藤吉と同じように愛する人と歩む道を選んだに過ぎない。そして息子の駆け落ちにより、てんは初めて自分の両親がどれだけ心を痛めたのかを自ら思い知らされることになります。
隼也と久しぶりに再会したてんが、「わろてるか?」と心配して尋ねるくだりも、その昔、てんが駆け落ち後に再会した父・儀兵衛とのやりとりと同じです。
隼也の笑顔を見て、息子の幸せを確認したてんの表情がじつに味わい深い。愛に生きるという息子を肯定しつつ、じつは自分自身の生き方をも肯定できた瞬間でした。
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視聴者としては、藤吉亡きあと、絶大な支持率を得ていた
伊能栞(高橋一生)になびかないのかしら? というほのかな期待もありましたが、てんはまったく揺らがず、これまでどおりの距離感で伊能と交流していきます。
伊能が渡米する前に、てんと2人で“ラストダンス”を踊るシーンでは、友情や同志愛という言葉では言い尽くせない深い絆を感じました。互いの心のうちは、2人のみぞ知るところ。でも、藤吉への愛をまっとうするてんだからこそ、伊能はつかず離れずの大きな愛で、静かにてんを支え続けたのでしょう。
■女性が働くことが厳しい時代に、てんが多くの人に支えられたワケ
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亡くなってからも、幽霊としててんの前に登場し続けた藤吉。これはかなり画期的な試み! 夢枕に立つとか、回想シーンが連打されるというのがこれまでの朝ドラの常とう手段でしたが、やはり『わろてんか』は夫婦の物語ということで、脚本家の吉田智子もそこを貫きとおした感じです。
残されたてんは北村笑店の社長となり、女興行師として会社のかじ取りをしていきます。ここでてんを支えたのが“北村ファミリー”でした。シングルマザー、しかも細腕で社長という重責を背負いながら、てんがくじけなかったのは、やはり社員を含めた大きな家族の存在が大きかったと思います。
幼なじみでずっとてんを支えてきた風太(濱田岳)とおトキ(徳永えり)夫妻はもちろん、永遠の王子キャラである伊能、そして北村笑店の全員が、てんをあらゆる側面で支えていきます。
なぜ、てんは彼らに手厚くサポートされるのか? それは彼女がこれまで彼らを家族として大切にしてきたから。北村家の3つの家訓「始末・才覚・算用」に加え、てんが行動で示した「人財」。
まさに
「人は財なり」ということで、てんは人生において、家族というかけがえのない財産を築き上げました。
もちろん悲しいできごとに涙する局面もありましたが、そういうときも、周りの家族が寄り添ってくれました。情けは人のためならず。つねに人の立場になり、相手を思いやってきたてんですが、その恩恵はそのまま自分に返ってきました。本当に思いやりの大切さを痛感させられます。
■戦争で焼け野原となった広場で、何かが起こる!?
戦争の建物疎開ということで小屋もたたみ、その後焼け野原となってしまった大阪。てんの目に映ったのは、おそらく絶望的な光景だったと思います。間違いなく、てんにとっての最大の試練となることでしょう。
「一生、わろてんか」という藤吉の決めぜりふで結婚したてん夫妻。そんな逆境を前に、てんをもう一度立ち上がらせるのは、きっと藤吉と2人で追い求めた夢でしょう。
戦争で物質的にいろんなものを失ったてんですが、「一生、笑って生きていく」と決めた藤吉との約束を忘れたわけではありません。はたして最後の最後で、てんはどんな笑顔を見せてくれるのでしょうか?
夫・藤吉との愛に生き、その夢を支え、いつしか自分の夢としてきたてん。そんな生活はまさに山あり谷ありの連続でした。それでもてんと藤吉夫婦がみせてくれたのは、どんな局面でも笑顔を忘れないことで、希望が生まれていくというメッセージ。
時代は違えども、夫婦を襲う困難な局面、子育てのつらさと喜び、そして働くということに、腹をくくって笑顔で挑んだてんの生き方には、見習いたいものが多くありました。
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