■悪気・自覚のない人にイライラ「3つの解決方法」
バウンダリー・オーバーで問題を複雑にしているのは、バウンダリーを超えている側に
悪気や自覚がないこと。
「彼らは、他人には自分と違う感情があるということが分からないんです。特に要注意なのは、何かにつけて
『あなたのためを思って』と言いながら押しつけてくる人。本人は善意で動いているつもりなのでしょうが、深層心理では
自分の欲求を満たしたいだけなのです。
例えば、留守中に隣人が自分の庭の草刈りを勝手にやっていたとしたら、どう感じるでしょうか? 本人はよかれと思ってやっています。こういう人は、放っておくとどんどんあなたの領域に踏み込んできますよ」(おのころさん)
バウンダリー・オーバーは自然に解決できるものではないため、自分で何かアクションを起こす必要があります。では、問題にどう対処したらいいのでしょうか。まず大切なのは、相手の行動や言葉のうち、どの部分がイヤなのかを分析したうえで、
「ここからが自分の領域、ここからが相手の領域」というバウンダリーをしっかりと引くこと。
そのうえで、おのころさんは以下の3つの解決方法を挙げています。
1. 相手との関係を完全に断ち切る。
2. 自分の“器”を増やし、相手を受け入れる。
3. 相手に「嫌だ」「それはダメ」と意思表示をして理解してもらう。
「バウンダリー・オーバーを完全になくすには、1番目の方法しかありません。近所に嫌な人がいれば引っ越す、会社なら転職する、友人なら付き合いをやめるなど、関係を断ち切ればいいでしょう。
とはいえ、人間関係にはいろいろなしがらみがあり、簡単に住居や仕事、友人関係を変えるわけにはいかない場合がほとんどです。そのため、あまり現実的な解決策とはいえません」(おのころさん)
2番目の方法について、おのころさんは自分の人間関係を図にしてみることを提案しています。
「図を見ながら、子ども、夫、親、友人、同僚、部下、ご近所さんなど、どこまで自分が引き受けるのかを一度じっくり考えてみましょう。自分にその器があると思うならとことん付き合えばいいでしょう。でも、一番大切なのは自分自身です。自分が体を壊してしまっては意味がないので、無理をしないように気をつけてください」(おのころさん)
自分自身に余裕があり、かつ相手が両親や親友などの大切な人であれば、有効な解決法といえるかもしれません。
最も現実的で、かつ有効なのは3番目の方法です。ただし、直接的に「嫌だ」「やめてほしい」といった強い言葉をぶつけるのは得策ではありません。
「最近は打たれ弱い人が多く、他人に怒られることに慣れていません。相手の怒りを買ってしまうと、周囲の人にありもしないウワサ話を言いふらされるなど、やり返されてしまう可能性があります」。
そこでおすすめなのが、
サブリミナルなトークとボディランゲージを使って、さりげなくバウンダリーを引く独自のメソッドです。
例えば、長話を切り上げたい時には、
手のひらを体の前に突き出してクルッと円を描く。私もよく使っている方法で、一見すると無意味な動きなのに、かなりの確率で相手は話を切り上げてくれますよ。相手の
潜在意識に語りかけるので、誰も傷つけることなく、少しずつ相手を自分の領域から追い返すことができます」(おのころさん)
相手が敏感な人なら一度だけでも効果がありますが、すぐには効果が見えなくても何度も繰り返すことが必要。繰り返していくことで、少しずつ自分の領域を広げることができます。次回は、こうした具体的なバウンダリーを引くテクニックを、いくつかご紹介していきます。
参考図書:
『人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方』(同文舘出版)
おのころ 心平 著 1,512円(税込)
24年間で2万4000件、のべ5万時間以上のカウンセリングから導き出した「病気にならない心理学」の本。快適でベストな人間関係を築くために、自分と相手とのバウンダリー(境界線)を引くことを提唱する。
表情・しぐさ・言葉遣いをほんの少し変えるだけで「自分の領域」を守る方法や、バウンダリー上手な人になるためのテクニックを紹介。
イラスト/野原広子
取材・文/まちとこ出版社 渡辺裕希子
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