コミックエッセイ:夫婦・子育ていまむかし
実は愛妻家だった? 「光る君へ」の藤原道長の意外な一面とは【夫婦・子育ていまむかし Vol.23】
二面性のある不思議な性格だった?
そんな気遣い上手な、そして身内には無邪気な一面も見せていた道長ですが、同性に対してはどこか怖さを感じるエピソードが豊富です。
長兄道隆の息子であり道長の甥、伊周とは特にソリが合わなかったのか政治的に対立していたとはいえ、宮中で掴み合いの喧嘩をしたり、弓くらべでは挑発して見事に矢を命中させています。
若い時には宿直(夜間の宮中警護)中、暇を持て余した帝(花山天皇)から肝試しを命じられ、次々脱落した兄たちを尻目に一人お供もつけずひょうひょうと歩いて行き、大極殿まで行って柱の一部を証拠に削り取ってきたという逸話も。
感情豊かなのに、冷静で豪胆。で、めちゃくちゃ負けず嫌い。多才で不思議な人だけど、成功する人ってこういう人なんだろうな、という妙な納得感もあります。(もちろん後年作られたエピソードも多数あると思いますが)
有名なアノ歌は
ダダ滑りしていた可能性も
そして冒頭に登場したアノ有名な月の歌。
実は『黒歴史』だった…のかもしれません。
一族から三代の皇后を出す『一家三后』という歴史上類を見ない大成功を収めた道長。そりゃ調子に乗ってしまうのもわからなくはないのですが…。
娘威子が後一条天皇の中宮に立后したことを祝う祝賀会でのこと。『小右記』を記した藤原実資を呼んで
「今から歌を詠むから必ず返歌してほしい」
と前置きし、実資も「もちろんです!返さないことなどありましょうか」と応じたのですが、詠んだ歌があまりにもあまりにもだったからでしょうか…? 返歌をする代わりにその場にいた公卿(くげ)たちと道長の歌を唱和しました。
『小右記』にこの歌について特別批判めいたことは書かれていませんが、返歌を約束した上でのこの対応って、ちょっと勘繰ってしまいますね。最高権力者が浮かれているのをみんなドン引きして見ていた…?
ということで、きっと道長も翌朝酔いが醒めたら(みんな記憶なくしてますように…)とゾッとした酔っぱらい傲慢ソングだったのかもしれません。(もちろん諸説ありますが。)
他にもたくさんのエピソードが残っており、有名な紫式部や和泉式部たちとの会話も残されています(セクハラトーク多め)。
本人の直筆も残っていて、事細かに日記に記す几帳面さの割に字の書き方はおおらかだったりとさまざまな面が見えて面白いのですが、『紫式部日記』などから人物像を探るのもおすすめです。成功する男の特徴・性格が垣間見えるかもしれませんよ。
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