携帯料金の“値上げ”ってどういうこと? 最近の動きをわかりやすく解説
今回のお話「携帯料金の“値上げ”ってどういうこと?」
ここ数カ月、携帯会社による料金改定のニュースが相次いでいます。auは既存プランの値上げ、ドコモは新プランが割高傾向、ソフトバンクは検討段階。なぜ今この動きが起きているのでしょうか?そして、利用者にどんな影響があるのでしょうか。
最近、「携帯料金が値上がりするらしい」というニュースを見ることが増え、「え、うちも上がるの……?」とドキッとした人もいるかもしれません。
とくに年末は出費が多くなる時期。毎月の固定費はできるだけ抑えておきたいですよね。今回は、今なぜ“携帯料金の値上げ”が話題になっているのか、そしてどんな変化があったのかを解説していきます。
■携帯会社は“料金の正常化”を進めている
今年に入って、携帯料金に関する「値上げ」や「料金改定」のニュースが一気に増えました。
ここ数年は値下げ競争が続き料金が下がり続けてきましたが、実はその裏で電気代の上昇や基地局の維持費、通信品質向上のための投資、さらには次世代通信となる6Gの開発など、各社のコストは増える一方だったんです。
そのため今、携帯会社は料金を“本来の水準”に戻し始めており、一定の値上げが避けられない状況になっています。
こうした背景から「うちも上がるのかな?」と不安になる人もいれば「自分は関係ないだろう」と思っている人も。
でも実際は、契約している携帯会社やプランによって値上げの影響を受ける人・受けない人が分かれます。まずは、その仕組みを知ることが大切です。
■“値上げ”には二つのパターンがある!
実は、ひとくちに値上げといっても大きく分けて二つのパターンに分かれます。
◇(1)新プラン切り替え型
最近の携帯会社の値上げで最も一般的なのがこのパターンです。旧プランの新規受付を終了し、「○日以降の契約は新プランで」という流れで、新たに契約する方から順に新プランへ移行していく方式です。
「お得な新プランが登場」と紹介されることもありますが、実際には新プランのほうが高く設定されているケースも多く、実質的には値上げにつながることがあります。
ただし、このタイプは自分からプランを変えない限り、すぐに料金が上がるわけではありません。◇(2)既存プラン値上げ型
今年 au と UQ mobile が新プラン切り替え型とは別に実施したのがこちらです。 ユーザーがプランを変更していなくても既存ユーザーの月額料金が自動的に110円〜 330円アップする「強制値上げ」とも言える形式です。
今回の特徴的な点は、対象の範囲がかなり広いことです。 10年以上前の古いプランを使い続けている方まで含め、ほとんどのユーザーが影響を受ける大規模な改定となりました。
値上げに合わせて一部の付帯サービスも追加されましたが、個別に詳しい案内があるわけではないため、多くのユーザーがそのサービス内容を知らないまま値上げだけが反映されている状況です。 この結果、実質的には多くの利用者にとって「純粋な値上げ」となってしまっています。
■「新プラン型」の値上げは、さらに2タイプに分かれる
携帯会社の値上げ手法として多くとられる「新プラン型」。こちらはさらに二つのタイプに分かれます。
◇(1)付帯サービスの“抱き合わせ型”(=実質値上げ)
☆docomo
6月に始まった新プラン「ドコモ MAX」は、旧プランよりも月額約1,000円の大幅アップとなりました。 その代わり、別途加入すると月額4,200円かかるスポーツ配信サービス「DAZN(ダゾーン)」が無料で付いてきます。
この方式は“トータルではお得”という見せ方をしていますが、DAZNを使わない人にとっては純粋に値上げになってしまいます。
さらに、ドコモでんきセット割や長期利用割、dカードの種類による割引額の違いなど、割引条件が増えて複雑化しました。
その結果、料金の組み合わせは300パターン超えというこれまでにない難解さになっていて、割引を全て適用できたとしても旧プランから月額220円の値上げとなりました。
☆au
旧プランを残しつつ、海外ローミングや衛星通信、混雑時の通信優先など、幅広い付帯サービスを盛り込んだ「バリューリンクプラン」を新設。
旧プランより月額220円アップで付帯サービスが多く多機能で魅力的に見えますが、これらをフル活用できる人はかなり限られます。
また、既存プランのまま使い続けると混雑時の通信速度で“差”がついてしまう仕組みになっていて、実質的には 新プランへ誘導されやすい構造になっています。☆UQ mobile
旧プランに対して月額330円アップし、月額548円の別途加入するオプションだった「スマートパス」が無料付帯となる新プランが登場。
一見「お得」に見えますが、スマートパスの利用有無にかかわらず外せない設計のため、必要ない人にとってはそのまま値上げになってしまいました。
◇(2)割引が強化される“割引依存型”
☆Y!mobile
基本料金は上がりましたが、光セット割や PayPay カード割が強化され割引を取れる人にはお得な構造になったものの、割引条件を満たせない人にとっては値上げとなりました。
こちらは光回線・決済サービスをまとめて利用するほど得になる、“囲い込み型”の料金設計と言えます。
☆SoftBank
現段階では「値上げを検討中」と発表されているだけで、方向性はまだ明確ではありません。
docomoのように付帯サービス型に寄せるのか、au のように既存プランを値上げするのか、あるいはY!mobileのように割引強化型にするのか、今後の動きが注目されています。
一方でRakuten Mobileは「値上げしません」と明言しています。料金がシンプルでわかりやすい点もあり、競合する各社との対照が際立っています。
■“人によって値上げにも値下げにもなる”のが今の料金改定
今回の料金改定のややこしいところは、「同じ会社の同じ改定でも使う人によって“高くなる人”と“安くなる人”が分かれる」 という点です。
付帯サービスを使うかどうか、割引を適用できるかどうかで、毎月の支払い額が大きく変わってしまいます。そのため今は、基本料金の数字だけを見ても正しい判断ができない仕組みになっています。
■値上げニュースは金額より仕組みをチェック
まず見るべきは、自分の携帯会社が行ったのは「新プラン型」か「既存プランの値上げ型」かという点です。ここが分かるだけで、ニュースが“自分ごと”かどうかが分かります。
次に、プランを検討するときは「付帯サービスは使うのか?」「割引条件はムリなく取れるのか?」この2つを確認しましょう。
今の携帯料金は基本料金ではなく「割引の適用」「付帯サービスの活用有無」で差がつく時代です。ご自身の生活スタイルと、プランの割引や付帯サービスの条件が合致するかどうかを基準にすることが大切です。令和のマネーハック137
“値上げ”という言葉だけを見ると不安になりますが、会社ごとに内容も背景もまったく違います。内容を正しく把握し「自分に関係する値上げかどうか」「新たなプランは自分の使い方に合っているのか」を落ち着いて見極めましょう。
専門家に聞きたいお金の悩みを教えてください!
(文:鮎原透仁、イラスト:itabamoe)
ここ数カ月、携帯会社による料金改定のニュースが相次いでいます。auは既存プランの値上げ、ドコモは新プランが割高傾向、ソフトバンクは検討段階。なぜ今この動きが起きているのでしょうか?そして、利用者にどんな影響があるのでしょうか。
最近、「携帯料金が値上がりするらしい」というニュースを見ることが増え、「え、うちも上がるの……?」とドキッとした人もいるかもしれません。
とくに年末は出費が多くなる時期。毎月の固定費はできるだけ抑えておきたいですよね。今回は、今なぜ“携帯料金の値上げ”が話題になっているのか、そしてどんな変化があったのかを解説していきます。
■携帯会社は“料金の正常化”を進めている
今年に入って、携帯料金に関する「値上げ」や「料金改定」のニュースが一気に増えました。
ここ数年は値下げ競争が続き料金が下がり続けてきましたが、実はその裏で電気代の上昇や基地局の維持費、通信品質向上のための投資、さらには次世代通信となる6Gの開発など、各社のコストは増える一方だったんです。
そのため今、携帯会社は料金を“本来の水準”に戻し始めており、一定の値上げが避けられない状況になっています。
こうした背景から「うちも上がるのかな?」と不安になる人もいれば「自分は関係ないだろう」と思っている人も。
でも実際は、契約している携帯会社やプランによって値上げの影響を受ける人・受けない人が分かれます。まずは、その仕組みを知ることが大切です。
■“値上げ”には二つのパターンがある!
実は、ひとくちに値上げといっても大きく分けて二つのパターンに分かれます。
◇(1)新プラン切り替え型
最近の携帯会社の値上げで最も一般的なのがこのパターンです。旧プランの新規受付を終了し、「○日以降の契約は新プランで」という流れで、新たに契約する方から順に新プランへ移行していく方式です。
「お得な新プランが登場」と紹介されることもありますが、実際には新プランのほうが高く設定されているケースも多く、実質的には値上げにつながることがあります。
ただし、このタイプは自分からプランを変えない限り、すぐに料金が上がるわけではありません。◇(2)既存プラン値上げ型
今年 au と UQ mobile が新プラン切り替え型とは別に実施したのがこちらです。 ユーザーがプランを変更していなくても既存ユーザーの月額料金が自動的に110円〜 330円アップする「強制値上げ」とも言える形式です。
今回の特徴的な点は、対象の範囲がかなり広いことです。 10年以上前の古いプランを使い続けている方まで含め、ほとんどのユーザーが影響を受ける大規模な改定となりました。
値上げに合わせて一部の付帯サービスも追加されましたが、個別に詳しい案内があるわけではないため、多くのユーザーがそのサービス内容を知らないまま値上げだけが反映されている状況です。 この結果、実質的には多くの利用者にとって「純粋な値上げ」となってしまっています。
■「新プラン型」の値上げは、さらに2タイプに分かれる
携帯会社の値上げ手法として多くとられる「新プラン型」。こちらはさらに二つのタイプに分かれます。
◇(1)付帯サービスの“抱き合わせ型”(=実質値上げ)
☆docomo
6月に始まった新プラン「ドコモ MAX」は、旧プランよりも月額約1,000円の大幅アップとなりました。 その代わり、別途加入すると月額4,200円かかるスポーツ配信サービス「DAZN(ダゾーン)」が無料で付いてきます。
この方式は“トータルではお得”という見せ方をしていますが、DAZNを使わない人にとっては純粋に値上げになってしまいます。
さらに、ドコモでんきセット割や長期利用割、dカードの種類による割引額の違いなど、割引条件が増えて複雑化しました。
その結果、料金の組み合わせは300パターン超えというこれまでにない難解さになっていて、割引を全て適用できたとしても旧プランから月額220円の値上げとなりました。
☆au
旧プランを残しつつ、海外ローミングや衛星通信、混雑時の通信優先など、幅広い付帯サービスを盛り込んだ「バリューリンクプラン」を新設。
旧プランより月額220円アップで付帯サービスが多く多機能で魅力的に見えますが、これらをフル活用できる人はかなり限られます。
また、既存プランのまま使い続けると混雑時の通信速度で“差”がついてしまう仕組みになっていて、実質的には 新プランへ誘導されやすい構造になっています。☆UQ mobile
旧プランに対して月額330円アップし、月額548円の別途加入するオプションだった「スマートパス」が無料付帯となる新プランが登場。
一見「お得」に見えますが、スマートパスの利用有無にかかわらず外せない設計のため、必要ない人にとってはそのまま値上げになってしまいました。
◇(2)割引が強化される“割引依存型”
☆Y!mobile
基本料金は上がりましたが、光セット割や PayPay カード割が強化され割引を取れる人にはお得な構造になったものの、割引条件を満たせない人にとっては値上げとなりました。
こちらは光回線・決済サービスをまとめて利用するほど得になる、“囲い込み型”の料金設計と言えます。
☆SoftBank
現段階では「値上げを検討中」と発表されているだけで、方向性はまだ明確ではありません。
docomoのように付帯サービス型に寄せるのか、au のように既存プランを値上げするのか、あるいはY!mobileのように割引強化型にするのか、今後の動きが注目されています。
一方でRakuten Mobileは「値上げしません」と明言しています。料金がシンプルでわかりやすい点もあり、競合する各社との対照が際立っています。
■“人によって値上げにも値下げにもなる”のが今の料金改定
今回の料金改定のややこしいところは、「同じ会社の同じ改定でも使う人によって“高くなる人”と“安くなる人”が分かれる」 という点です。
付帯サービスを使うかどうか、割引を適用できるかどうかで、毎月の支払い額が大きく変わってしまいます。そのため今は、基本料金の数字だけを見ても正しい判断ができない仕組みになっています。
■値上げニュースは金額より仕組みをチェック
まず見るべきは、自分の携帯会社が行ったのは「新プラン型」か「既存プランの値上げ型」かという点です。ここが分かるだけで、ニュースが“自分ごと”かどうかが分かります。
次に、プランを検討するときは「付帯サービスは使うのか?」「割引条件はムリなく取れるのか?」この2つを確認しましょう。
今の携帯料金は基本料金ではなく「割引の適用」「付帯サービスの活用有無」で差がつく時代です。ご自身の生活スタイルと、プランの割引や付帯サービスの条件が合致するかどうかを基準にすることが大切です。令和のマネーハック137
“値上げ”という言葉だけを見ると不安になりますが、会社ごとに内容も背景もまったく違います。内容を正しく把握し「自分に関係する値上げかどうか」「新たなプランは自分の使い方に合っているのか」を落ち着いて見極めましょう。
専門家に聞きたいお金の悩みを教えてください!
(文:鮎原透仁、イラスト:itabamoe)