くらし情報『麻世妙、よみがえる大麻布~聖なる植物、大麻の歴史~【前編】』

麻世妙、よみがえる大麻布~聖なる植物、大麻の歴史~【前編】

飛鳥時代から平安時代の租税制度「租庸調」。調とは繊維製品のことであり、調絹(絹製品)や調布(大麻、苧麻や葛の繊維品)と2種類あった

Photo by Kazan Yamamoto (c) FASHION HEADLINE


日常生活から神道儀礼まで、日本人に欠かせない存在だった“大麻”四季折々の豊かな自然に恵まれた日本。昔から人々は、身の周りの植物や山に自生する草木の皮や茎の繊維を採り、績み、紡いだ糸で布を織って、暮らしに役立ててきた。「昔から、日本では葛や藤、和紙の材料とされる楮(こうぞ)、芭蕉などの植物繊維を用いて布を織りあげてきました。素朴で独特な風合いの自然布は、今なお人々に愛され、受け継がれています」と近世麻布研究所・所長の吉田真一郎さんは話す。吉田さんは、30年にわたり日本の自然布を研究、中でも主に江戸時代の大麻布と苧麻布の繊維と糸の研究に取り組んできた。「縄文時代の遺跡からも大麻の編み生地や紐などが出土しているように、大麻は日本人の暮らしに欠かせない素材として用いられてきました。木綿が普及する江戸時代前までは、日本各地で栽培できる大麻や苧麻が衣料素材の主流でした」また衣料素材としてだけではなく、大麻は「聖なる植物」として特別視されていた。
神道の祭祀では「おおぬさ」と称され、樹皮から採った皮を束ね神様への捧げものにしていた。

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