先人の技術、意思を継ぐ「バトナー」【山形ニット紀行Vol.2--奥山メリヤス】
バトナー 15-16AWコレクションより
もともと家業を継ぐつもりはまったくなかったという同氏。「周りのニット会社がどんどん廃業していくし、いつも大変そうにしている親父の背中も見ていた。とても将来があるとは思えなかった」と当時を振り返る。
しかし、東京でファッション関連のOEM会社に就職し、洋服作りの楽しさに夢中になっていた頃、「帰ってきて手伝ってほしい」というSOSが実家から送られてきた。「それから10年、ニット作りの奥深さにハマり、気づいたらニット生産におけるすべての工程をマスターしていた」
その確かな技術と生産背景をもとに、スタートしたバトナーは、地方発信の産地ブランドにありがちな不完全さとは無縁である。奥山氏は幼少時から洋服が大好きであり、東京での修業時代にブランド設立のノウハウやセンスを学んでいた。だから、最初から製品はもちろん、ブランドロゴ、ルックブックなどのすべてが洗練されていたのである。当然、工場直結だから、商品のツラにたいする価格は驚くほど安くなる。結果として、立ち上げからわずか6シーズンで、三越伊勢丹、ユナイテッドアローズ、阪急、シップスなどの大手百貨店、セレクトショップの口座を開拓。最近はショールームなどに営業代行を委託するケースも多いが、コネクションゼロの状態から奥山氏と営業の岩田氏の二人でコツコツ開拓してきたのだという。
バトナーのニットは、シンプルだけど奥が深い。
毎シーズン欠かさずにラインナップしている片畦編みのニットは、胸元の富士山のような切り替えと立体的な編み目が特徴。ざっくりしたノルディックセーターは、毎日足を運ぶ染工場とのやりとりで素材の持つ特徴を最大限に引き出したものである。伊勢丹でも取り扱いのあるカシミヤ100%のミドルゲージのケーブルセーターは、ケーブルの編み目がより立体的に出るように機械を調整して製作している。デザインに合わせて原料から仕込んでいるから、デザインと糸とのマッチングも完璧に近い。各ショップでリピーターが続出しているというのにも頷ける完成度の高さだ。
今後は海外進出も視野に入れている。「まずはパリでメンズを見せることから始めたみたい」と話す奥山氏。洋服を良く知る玄人であればあるほど驚く、かれのクリエーション、工場の技術は、きっと世界を静かに驚かせてくれるに違いない。
■取材・文/増田海治郎(ファッションジャーナリスト)
奥山メリアスの三代目、奥山幸平氏。
山形の奥山メリアスの自社工場内。
山形の奥山メリアスの自社工場内。
山形の奥山メリアスの自社工場内。
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