世界のとびきりおいしいをお裾分け「YOU BOX」from Georgia! 【前編】
Photo by Yu Nakamura
2013年のある日、うっかりホームレスになり、1ヶ所に帰る必要性が無いことに気づいた私中村優は、「とびきり美味しいものに出会う」旅を始めました。世界中にちらばったとびきり美味しいものには、決して作り手の技術による味だけではない、なにかしらの秘密があるはず。そして、出会ったとびきりを、とびきりな友達にお裾分けしたい。そんなひょんなことから「YOU BOX」は、生まれました。ここ最近のYOU BOXを振り返ると、朝に飲まれる緑のおかゆを巡り訪れたスリランカでは、アーユルヴェーダなどの“知恵が詰まった美味しさ”に出会いました。コスラエスープを求めて訪れ、主に火起こしを習ったミクロネシアでは、“プリミティブな美味しさ”に。そして、本当にこだわった生産者と、誰もが美味しいと思うようなプロダクトに出会えたスペインでは、“洗練された美味しさ”……。さて、今回はどんな美味しさに出会えるでしょう。
今回の目的地は、世界をたくさん旅して美味しいものを食べている人が、「ジョージアの料理がとにかく美味しい」と言っていたことや、最近飲んだアンバー色のジョージアワインが面白かったので、ジョージアに。相変わらず、国を決めてから2週間後の出発と、ノープラン10日間の旅がスタートしました。ところで、YOU BOXの旅のスタートはいつも、往復航空券と初日の宿だけ決めた状態で日本を後にします。私は知識でフィルターを作ってしまわないよう、旅から帰ってからその歴史を調べる方が好きだったりするのです。ひとまず降り立ったのは、首都トビリシ。そこは、治安が良さそうな香りに包まれていたため意外な安心感を抱く反面、言葉が1ミリも予想出来ない状況が久しぶりで、「あ、そうか、言葉分からないのか」と当たり前ながら若干の不安を抱きます。初日の宿は、トビリシで初めてベジタリアンフードのデリバリーサービスをスタートさせた親子、エカさんとリーラさんのおうち。小さなガーデンを囲むようにして立つ彼女たちの家には、おばあちゃんの代から色んな人が泊まりに来ていたようで、画家が壁に絵を残して去っていたり、ハンドメイドの素敵な置き土産があるなど、人の交流の歴史が息づいていて温かい。
日常からよく食べるという緑のボルシチや、牛肉のダシが決め手のスープ「ハルチョー」のベジタリアンバージョンを習ったりしながらどこに行くか、考えます。ひとまず、東へ!目の前に、ブドウを積んだ車やトラックが見えてくる。さて、これからどこにいこう。どうやらワインは、東のKakheti地方が有名らしいので、ひとまず目指すは、東。タクシーの運転手と難解なお金交渉の末、通じていないであろう会話を続けていると、目の前にブドウを積んだトラックや車が現れはじめました。ブドウの町に近づいてきたみたい。少し賑わいが見えてきた場所で、「ランチ、行こうぜ!」みたいなジェスチャーをしてドライバーは車を停車。妙なところで降ろされたらどうしようかと思っていると、どうやらその日はブドウの収穫祭! みんな、食べて飲んで歌って踊って。
ふと隣を見ると、なぜかドライバーの家族がそこにいて、家族と一緒にお祭りを楽しむことに。Google mapで確認すると、どうやらここが目的地Signagi。その日の宿は、アーティストでありドクターの、スザンナさんのおうち。ロシア語しか話せないお母さんの言葉を一生懸命英語に訳す12歳の娘に胸をきゅんきゅんさせつつ、「ようこそおうちへBBQ」を頂きます。ぱっかーんとした笑顔は、青空に最高に映える。翌朝、外はつい走り出したくなるほどの快晴。早速散歩に出かけて、「ガーマルチョーバ!」(こんにちは)と覚えたてのあいさつをすると、とてつもなくフォトジェニックなおばあちゃんが、にぱっと笑って家に手招きしてくれます。よくわからないジェスチャーと音声で通信し、最後にはこれでもかってほどブドウを持たせてくれる。
近所のお家では、2人のおばあちゃんたちがジョージアの名物スイーツ「チュチェラ」を作っているところ。ローストしたくるみやヘーゼルナッツを糸に通し、ブドウのジュースを煮詰めたものと小麦粉と合わせてもったりさせた生地に漬け、6日間陰干しするのだそう。ジョージアにはブドウの品種が500種類以上もあると言われていますが、そのブドウの種類によって色が変わったり、粉の配合やジュースをどの程度煮詰めるかによっても味や出来映えが変わってくるのです。この後にもいくつか作っているおばあちゃんの元を訪れるも、このおふたりが作っているものは甘さも上品で粉の割合も少なく素材本来のリッチな味わいが格別。しかし、たくさんあるものを工夫してスイーツをつくり、しかも芋虫型だなんて、なんてクリエイティブなんだ! (日本では人気が出なそうなルックスではある笑)まいなすベネラさんとザウリさんは、この見晴らしの良い土地で、50年パンを焼き続けているのだそう。午後はスザンナさんと、近所のおしどり夫婦が営むかわいいベーカリーにいったり、自分たちで作っている自然派ワインを提供する素敵なレストランにいったり、近年世界遺産にも登録された最古のワイン醸造法で土の中に埋めてある壷(Qvevri)で自然発酵させてワインを作っているお家で、作り始めて2週間程度の若いワインを飲ませてもらう(太陽をいっぱいに浴びたブドウがギュっとした味で美味!)。私は、みんなが毎日お家で作っている「マツォーニ」(日本のプレーンヨーグルトよりほんの少し酸味が強い)、を毎朝食べるのが楽しみでした。でも、その菌がどこから来ているのか、どうやって作ってるのか気になって、農家さんを訪ねたいなーと話していた夜、「牛を一匹買っている女性がいるから、そこに行こう!」とスザンナさんが電話すると、「いつもならいいんだけど、さっきから牛がなぜか見当たらないの」と冗談のような回答。
再度30分後、そして1時間後にかけるもまだ牛は迷子のよう。翌朝に行こうとの約束を取り付け、翌朝何事も無かったかのように誰も現れなかったのは、なんとなく、予想の範囲内(笑)。その後現れたスザンナさんの父は私の肩をポンとたたき、笑顔で一言「明後日、一緒に行こうよ」。もともとないんだけれど、「計画」なんて立てても全く意味はなく、むしろ思い通りに行くと思ってただなんて! マツォーニを諦め、今度はSignagiで出会った同年代のロシア人女子たちと、北の山の方、Kazbegiを目指すことに。後編に続く。
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura
Photo by Yu Nakamura