【ファッションの“未来”たちに聞く】セントマーチンズで学んだゴミがawesomeに変わる瞬間--青木明子--2/2
毎シーズンのテーマを超えて、常に「オンナノコらしさ」が見え隠れするのが魅力のファッションブランド、アキコアオキ(AKIKO AOKI)。そのクリエーションはどんなところから来たのだろうか。彼女がアトリエを構える台東区デザイナーズヴィレッジでデザイナー青木明子に訊いた。1/2はこちらから。 ーーそして、「ここのがっこう」の後、セントマーチンにも進学されたんですね。カリキュラムはいかがでした?日本の学校とはまったく違いました。いい意味で個人プレーですし、言い換えると放置です。ーーほ、放置?!はい。
授業は週2回のみです。しかも朝の2、3時間だけ。とにかく、その日までに自分でワークを進めて、プレゼンして作品見せてチュートリアルをする。ひたすらその繰り返しです。ーーなるほど。リサーチに時間をかけろっていうことなんでしょうか?リサーチもそうですし、シェイプや素材、デザインに関するあらゆる可能性をチュートリアルで探り「来週までにもっとディベロップしろ」と言われ、それを1週間とにかく必死に進めて持っていく。その間に細かくチェックを受けて「どうしろ、こうしろ」みたいなことは一切言われません。質問や相談をしたいと思っても、いないんですよ、先生は学校に(笑)。
なので限られたチュートリアルに自分は何を聞きたいのかを必然的に明確にしていきますし、とにかく自分で押し進めるしかないです。でも、すごく鍛えられましたね。日本の学校だと、何でもすごく細かくケアするのが当たり前になっているので、自分でやるというよりも、先生の「こうしたら、ああしたら」という導きに「そうかも」という感じで乗っかっていくケースが多いように思います。ーーそれは大きな違いですね。本当に。しかも作品がよくないと、「そのゴミ、どけて」とふつうに言われます(笑)。全身全霊で向き合ったものを、です(笑)。クラスのみんなの前で言われるんです。
ーーそれはヘコみますね。へコみます(笑)そして、それ以上に悔しいですよね。私がやりたいことと、向こうが言うことが、全く噛み合ないこともありました。そうなると、もう平行線です(笑)でも相手がなぜそう言っているのか、自分のデザインに対してどういった視点で言っているのか、そしてそれは自分にはなかった新しい価値観、可能性なのかもしれないと、考える癖がつきます。同時に、自分が表現したいことでどうしたら納得させられるかも模索します。一見、逆のように見える思考を同時進行でしていく感覚です。迷宮の中から一気に新しい道が開けたとき、先週までのゴミがawesomeに変わることがありました。自分の中で軸はぶらしていないし、反対され続けたことを通しているのに、awesomeになります。
かっこよければ何でもOK。こっちからすれば、あんなに反対してたのにと一瞬思いますが、良いという判断が一瞬なのもうなずけますし、ファッションを本当にフラットに見ているからこそできる反応だと思いました。ーー世界中から進学しているんですよね?学部名はなんというのですか?自国、もしくは海外ででBA(学部)を卒業してる人、企業で1度、経験をつんでいるたちが進学できるGraduate Diplomaというコースです。MAとBAの間にあるコースで、セントマのBAを卒業した子たちはそこをスキップしてマスターにアプライできるのですが、ロンドンの美大以外を卒業した人がMAにアプライしたい場合は、ロンドンの美大のBAに行き直すか、もしくはGraduate Diplomaに1年通う必要があります。その後、マスターに進学してもいいですし、独立する人も多く、私も帰国しました。日本人は私を入れて2人だけでした。同級生はロンドンで自分のブランドを始めた子もいますし、メゾンに就職した子もいます。みんないい意味でライバルですし、今でもいい刺激になっています。
ーー青木さんはロンドンに残ろうとは思わなかったんですか?まず、現実的に考えて、自分がブランドとしてやっていきたいと思ったベースが日本でした。そして2つ目はアジア人は基本的にビザを取得するのが難しいです。ビザを取得して自分のブランドをロンドンで立ち上げるというのはかなり厳しいのが現状ですね。ーーなるほど。でも、日本で、自分のブランドを立ち上げるという夢を実現された!すごくラッキーだと思います。思いをそのままやり続けることができていることを幸せだと思っています。AKIKO AOKI 16SS コレクションーーその強い意思はどこから授かったと思いますか?やはり一番大きかったのは、坂部さんや、山縣さんと出会ったことだと思います。彼らが独自のやり方で、東京で自分のブランドをどんどん推し進めていく姿を見て感銘を受けました。
「そこにしか道がない」と思っていたファッションにおけるシステム自体も変えてしまっているので。私は、そういうことを2人の姿を通じて実感しているので、「ここからまた、次の手法を考えていかなきゃいけないんだな」と思います。ーー私見ですが、青木さんのコレクションには、いつもそういう堅い意思のようなものを秘めた女性像を感じます。改めて、ブランドのコンセプトのようなものを聞かせていただけますか?ブランドコンセプトとしては現実に潜むファンタジーを感覚で切りとり、ファッションを生きる行為そのものと捉えて、纏うひとの生き方や姿勢が感じられる衣服を提案しています。ファーストシーズンは自分自身の背景に1番強くあるイメージをテーマにしました。2シーズン目では、その時に気になる人間像をイメージソースにしました。これからは、より服そのものにフォーカスしたという意識があって、テーマを先に持ってくるよりも、衣服のデザインを先にしたいと思っています。テーマはぼんやりとはありつつも、逆にそのイメージを明確に言葉にできないまま進めてみてもいいのかな、と。
そうして生まれたコレクションから人間像が見えてくるファッションを作りたいと思っています。AKIKO AOKI 15AW コレクションーーセントマーチンズで習ったスタイルに近い?そうかもしれません。1アイディアから、自分の感覚を通してどれだけ繊細に向かい合えるかという部分では近いかもしれません。今、思い返すと、入学していちばん最初に「ロンドンプロジェクト」というのがあって、「ロンドンの街の中からインスピレーションを得なさい」という課題がありました。いろんな所に行って、街中のシミとか床の模様とか、人でもいいんですけど、なんてことないモノの中から、自分が何に着目して、それをどうディベロップするかというアプローチが新鮮な気がしているんです。ーーおもしろいですね。本当に小さなディティールとかに着目して、そういうものからデザインしていく、次のコレクションはそんな感じになるのでしょうか?もっと服として「いいな」と思えるもの。具体的な人間像もそうですが、その服自体に時代観があったり、新しい人間像があるのがいいなと思っているんです。たぶん、日本人はもともと背景とか物語性とかが好きだし、国民的にも合っていると思うんですけど、最近はちょっとそういうストーリーがわかりやすく無くても、もっと深い領域で成り立つコミュニケーションもあるのかもしれないと思うのです。ーーなるほど。小説みたいに誰が読んでも同じルートになるよりも、SNSとかウェブとか、1個1個の細かいエピソードを受け取った人たちが勝手に選んでストーリーを編集していく時代なのかもしれませんね。"点"がいっぱいあるほうが、もともと人間が持っている本能的な部分との接点も多くなるっていうか。それぞれの感覚がもっと鋭敏になって、受け取る機会も増えるんじゃないかと思うんです。ーーSNSの時代といわれていますが、結局は、情報発信や拡散の戦術よりも、モノ自体に魅力があれば、人は勝手にそこに情報を取りに行く。本質的というか、そこに強さがあるかどうかだと。作品を作って撮影するという行為は誰でもできるの時代なので、そこを強調したビジュアルつくりは時代観的に少し古いのかなという気はしています。ーー確かに、みんなリアルへの欲求がすごく高まっていますね。ますます加速しているような気がします。ーー2年後には今使っているアトリエ(台東デザイナーズヴィレッジ)も卒業になりますが?本当にあっという間だなぁと実感中です。私も卒業したら独立した自分のアトリエを見つけたいと思っています。【イベント情報】<第1弾>The drama ~TOKYO制服~会期:5月25日から6月7日(会期終了)会場:伊勢丹新宿店 本館2F=センターパーク/TOKYO解放区<第2弾>The life ~TOKYO制服~会期:6月15日から21日(会期終了)会場:ジェイアール京都伊勢丹5F 特設会場<第3弾>The days ~TOKYO制服~会場:7月27日から8月2日会場:銀座三越3F ル プレイス プロモーションスペース
Photo by Kazan Yamamoto (c) FASHION HEADLINE
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