くらし情報『「積み重ねた伝統を人から人へつなぐこと」江戸小紋職人・小宮康正さんを訪ねて』

2016年9月18日 16:00

「積み重ねた伝統を人から人へつなぐこと」江戸小紋職人・小宮康正さんを訪ねて

もみの木の1枚板が置かれている。生糊(もち米と糠でできた糊)が塗られた板に霧吹きで水をかけ、糊の粘りを戻す。そこに白生地を貼ったらいよいよ「型付け」だ。固定された生地に型紙を置き、糊をヘラで塗ってゆくと、型紙が彫られたところだけ糊がついて模様を描いてゆく。糊には防染材が入っていて、そこだけ染まらないようにしているのだ。型付けが終わると生地を干し、「しごき」と呼ばれる地色染め、蒸しなどの工程を経て、ようやく美しい小紋ができあがる。「作業は早ければ早いほどいい仕事。そのための段取りと腕を磨くことが大事」と小宮さんは言う。
伝統的技法の中においても「新しいものがあれば伝統技法の中にも取り入れていく」というのが、小宮さんの考えだ。たとえば染料。現在の江戸小紋では合成染料を使っている。「昔のままのものを、ただそのまま続けるのでは世の中に受け入れてもらえない」と小宮さん。伝統というのは変革の積み重ねであり、素材にしても、技術にしても変化が止まった時点で伝統は滅びてしまう。変わるのは染料や技法だけではない。現在は昔のように丁稚から修業を始めるわけではなく、学校を出てから修業を始める職人が主なので寝食を共にし、雑用をしながら技を習得するだけの時間がない。

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