テクニカルにクラシック回帰、鮮明に。ポール・スミス「PS」、キートン創業者のイベントも【ピッティウオモ91】
Photo by Tatsuya Noda (c)FASHION HEADLINE
1月10日にイタリア・フィレンツェで開幕した第91回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO 91)が4日間の日程を終えた。1,220ブランド(内海外ブランド540ブランド)が参加する世界最大のメンズファッションの合同展示会には、今年は約2万4,300人が来場した。今回のテーマは「Pitti Dance Off」。パーソナルなスタイルをコンテンポラリーなファッションで表現する方法として“ダンス”がクローズアップされ、メインビジュアルにフィンガータット(指先で行うダンス)が起用されたが、会場内でもダンスのパフォーマンスが各エリアで行われた。ポール・スミスがPSの初のプレゼンテーションで24年ぶりにピッティのゲストに1993年以来となるピッティのゲストデザイナーとして参加したポール・スミスまた、公式イベントとしてポール・スミス(Paul Smith)が1993年以来、久々にピッティのゲストデザイナーとして招待。今春よりスタートするディフュージョンライン「PS」の世界初となるプレゼンテーションを開催した。アクロバットダンスチームを起用し、デビッド・ボウイ、プリンス、ジョージ・マイケルなどの曲とともに、コレクションの一部をパフォーマンスで発表した。同ブランドのデザインコンセプトのひとつである自転車などのテーマを盛り込みつつ、コーデュラのハイテク素材を使用し、防水・防しわなどの機能を備えた軽量ジャケット、スーツなどをポール・スミスらしく、エンターテイメント性とユーモアで表現。
服そのものではなく、ブランドの背景にあるDNAや、ライフスタイルの提案がプレゼンテーションの大きなトレンドとなりつつある時代性を踏まえての演出となった。メインパビリオンを構成するクラシコブランドの2017-18秋冬シーズンの傾向は、アーガイルやハウンドトゥース、市松、ヘリンボーン、フィッシャーマンといった英国トラッドのモチーフが目立ち、全体にカシミア、ベビーアルパカ、モヘアといった高級獣毛混のウール素材を中心にしたミックス、ブレンドがキーワード。従来以上に軽さとやわらかさを強調したアイテムの提案が継続している。また、スポーツウェアの提案が幅を広げ、ハイテク素材使いでの差別化、スニーカー、ワークブーツのスタイリングが主流になっている。ベージュ×グレーを打ち出したブルネロ・クチネリブルネロ・クチネリ2017-18秋冬コレクションブルネロ・クチネリ (BRUNELLO CUCINELLI)ではシーアイランドコットンを使ったソフトコーデュロイのアイテムが、今回のプレゼンテーションのテーマとして打ち出された。スタイリングはベージュ×グレーのコーディネートでフレッシュなイメージ。ガーメントダイのシャツや新たにウールのデニムも発表し、メゾンが提案するラグジュアリー&コンフォートのライフスタイルをブース全体で表現している。ハイテク素材で機能強化、人気ラインを充実させたヘルノヘルノが2017-18秋冬よりスタートする「MAGMA」シリーズ日本でもこの数シーズン、メンズが売り上げ好調なヘルノ(HERNO)は一昨年発表した超軽量ダウン「7デニール」のさらに軽量化を図った「5デニール」を発表。
10年前に20デニールの軽量ナイロンダウンを発売したことを記念して、アニバーサリーモデルとして5色展開される。他にもレーザーカットした高密度ナイロン素材を熱ではなく超音波で接着した新技術のダウンジャケット「MAGMA」、ゴアテックスを使用してハイスペックなアーバンマウンテンウェアとして日本でも人気の「ラミナー」シリーズからは、ゴアテックスに変わるより軽量化を図った新素材イグルーラインを発表。技術の進化によって機能を訴求した新商品が、数多く提案されている。新たな市場開発に向け、アルテアからミレニアム世代に向けた新ラインアルテアが発表したプライスコンシャスなニューラインイタリアを代表する伝統的な物作りで、専業ファクトリーブランドからトータルブランドへと成長を果たしてきたクラシコ系ブランドだが、市場の成熟化とイタリア国内及び欧州の長引く不況から、新たなマーケット戦略を図る動きもある。1892年創業という歴史を誇るネクタイ専業メーカーからこの数シーズンニットジャケットなどで市場を拡大してきたアルテア(Altea)は、Tジャケットを開発した日本人デザイナーを起用し、2017-18秋冬より新たなラインをスタート。芯地や裏地を省き、工程に大幅に効率化したことでコストを抑えたジャケットとセットアップの2ラインで、「ミレニアム世代にも買いやすい価格帯を目指した」(ルカ・サルトリ・アルテア社長)というイタリア国内で約400~500ユーロ程度で販売される予定だという。ナポリから世界を制覇したレジェンド、チロ・パオーネの世界チロ・パオーネの特別イベント「TWO OR THREE THINGS I KNOW ABOUT CIRO(チロに関する2つか3つの知っていること)」前述したが、今回のピッティで目立ったのが、世界的なファッション市場の流れがライフスタイルへ向かっていることから、アイテム、トレンドの提案以上にブランドのDNAを再確認、最訴求する動きが強まっている。同展の公式イベントとして行われたキートン(Kiton)のファウンダーであり、現在のイタリアブランドのファッションシステムを誕生させた功労者としてチロ・パオーネ(Ciro Paone)の特別イベント「TWO OR THREE THINGS I KNOW ABOUT CIRO(チロに関する2つか3つの知っていること)」が開催された。
同イベントでは、洋服はキートンを代表するスーパーファインウールのネイビージャケットをサイズ違いで展示するだけにとどめられた。それ以外の展示セクションでは、ファッションのアイデアが生まれる現場であったチロ本人の食卓、生地が裁断される現場の匂い、アイロンの蒸気、端布が散乱した床などをインスタレーションで展示するなど、ナポリが生んだイタリアを代表するファッション企業家の人生をフィレンツェらしいアート表現で称えた。同イベントのアートディレクションを担当したアンジェロ・フラッカヴェント(Angelo Flaccavento)は「ファッションだからと、服だけを見せる展示は既に魅力を失っている。その背景を含めて見せる楽しさが必要」と説明する。6つのブースに分かれた最後の部屋はキートン社のファブリックで作られたイタリアの国旗、屋外テラスには伊達男で女性にモテたというレジェンドの名を呼ぶ女性の甘い声がスピーカーから流れているというユーモアで来場者を和ませた。Text: 野田達哉
Photo by Pitti Imagine Uomo(c)
Photo by Pitti Immagine Uomo(c)
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