マルタン・マルジェラ、日本初の大規模個展を九段ハウスで開催──“ファッションの先”にある表現
ファッションデザイナーとして知られるMartin Margielaが、アーティストとして日本初となる大規模個展「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」を東京・九段で開催しています。会場となるのは、1927年竣工の登録有形文化財「九段ハウス」です。ファッションの文脈で語られてきたマルジェラの創作が、歴史的建築という空間の中で、視覚芸術として再提示されています。当初4月29日までを予定していた会期は、好評を受け5月5日まで延長されました。
photo by ©FASHION HEADLINE
ファッションの“その先”へ 2008年、マルジェラはファッションの世界から距離を置き、以降はビジュアルアートに専念してきました。本展は、その活動を包括的に紹介する日本初の機会となります。
人間の身体、痕跡、時間、不在──。
彼の作品はこれらのテーマを軸に、再利用や分解、変容といったプロセスを通じて、日常の中に潜む“見過ごされたもの”を浮かび上がらせています。
「答えを示すのではなく、問いを投げかけたい」
──マルジェラの言葉は、本展の体験そのものを示していると言えそうです。
©Pierre Anton
九段ハウスという“舞台” 本展を語るうえで欠かせないのが、会場となる九段ハウスの存在です。1927年、実業家・山口萬吉の私邸として建てられたこの洋館は、内藤多仲(構造)や木子七郎(意匠)らによって設計された鉄筋コンクリート造の建築であり、現在は登録有形文化財として保存・活用されています。スペイン様式の意匠を持つ3階建ての建物は、現代の都市においては異質ともいえる静けさを湛えています。
photo by ©FASHION HEADLINE
九段下駅から徒歩5分ほど。武道館や靖国神社に近接しながらも、高層建築に囲まれた街の中で、この場所だけが時間の流れから切り離されたような空気を持っています。敷地内に広がる木々の緑と低層の佇まいは、都市のノイズをやわらかく遮断し、作品へと向き合うための“余白”を生み出しています。
photo by ©FASHION HEADLINE
空間を巡る体験としての展示 展示は建物全体を用いて構成されています。来場者は1階から2階、3階へと進み、再び1階を経て地下へと降りる動線の中で、計24点の作品と対峙していきます。館内ではスリッパに履き替え、靴はトートバッグに入れて持ち歩くという形式が取られています。
Interior,2021 | photo by ©FASHION HEADLINE
文化財としての建物を保護するための措置でありながら、その行為自体が空間への意識を変化させる装置として機能しています。床や壁の養生もまた、作品の演出と静かに重なり合い、鑑賞者の視線を自然と作品へと導いていきます。
Vanitas II,2024 | photo by ©FASHION HEADLINE
談話室、キッチン、バスルーム、茶室──
生活の痕跡を残す空間に作品が配置されることで、展示は単なる“鑑賞”ではなく、私的な空間へ入り込むような体験へと変化していきます。これは、マルジェラが重視する“親密さ”そのものとも言えそうです。
Bus Stop,2020 | photo by ©FASHION HEADLINE
都市の中の静寂へ 最後の作品を見終えると、来場者は再び靴に履き替え、細い階段を上って中庭へと抜けていきます。
photo by ©FASHION HEADLINE
展示の余韻は、屋外へと開かれたこの空間でゆるやかに続き、やがてミュージアムショップへとつながっていきます。図録やトートバッグ、Tシャツに加え、スタッフが着用している法被も販売されており、展示体験はプロダクトとして持ち帰ることも可能です。
photo by ©FASHION HEADLINE
再び東京で マルジェラにとって、住宅空間を舞台に作品を展開する試みは初めてではありません。2000年には、東京・恵比寿の邸宅を用いた店舗をオープンし、浴室やキッチンを含む空間全体にコレクションを展示しました。
それから四半世紀。
2026年、再び東京に戻り、歴史的住宅で作品を発表するという選択は、必然とも言える流れかもしれません。
「各部屋の親密な空間の中で作品と出会い、驚きを感じてもらえたら」
──その言葉どおり、本展は都市の中にひらかれた、極めて個人的な体験として立ち現れています。
photo by ©FASHION HEADLINE
【INFORMATION】
MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE
会期:2026年4月11日(土)~5月5日(火)※延長
時間:10:00~19:00(最終入場18:00)※JST
※4月29日のみ17:00閉館(最終入場16:00)
会場:九段ハウス
住所:東京都千代田区九段北1-15-9
料金:一般 2,500円(税込)
ファッションの“その先”へ 2008年、マルジェラはファッションの世界から距離を置き、以降はビジュアルアートに専念してきました。本展は、その活動を包括的に紹介する日本初の機会となります。
人間の身体、痕跡、時間、不在──。
彼の作品はこれらのテーマを軸に、再利用や分解、変容といったプロセスを通じて、日常の中に潜む“見過ごされたもの”を浮かび上がらせています。
コラージュ、彫刻、映像、アッサンブラージュなど、多様な手法によって構成された作品群は、既視感のある素材を異なる視点へと転換させていきます。
「答えを示すのではなく、問いを投げかけたい」
──マルジェラの言葉は、本展の体験そのものを示していると言えそうです。
九段ハウスという“舞台” 本展を語るうえで欠かせないのが、会場となる九段ハウスの存在です。1927年、実業家・山口萬吉の私邸として建てられたこの洋館は、内藤多仲(構造)や木子七郎(意匠)らによって設計された鉄筋コンクリート造の建築であり、現在は登録有形文化財として保存・活用されています。スペイン様式の意匠を持つ3階建ての建物は、現代の都市においては異質ともいえる静けさを湛えています。
九段下駅から徒歩5分ほど。武道館や靖国神社に近接しながらも、高層建築に囲まれた街の中で、この場所だけが時間の流れから切り離されたような空気を持っています。敷地内に広がる木々の緑と低層の佇まいは、都市のノイズをやわらかく遮断し、作品へと向き合うための“余白”を生み出しています。
空間を巡る体験としての展示 展示は建物全体を用いて構成されています。来場者は1階から2階、3階へと進み、再び1階を経て地下へと降りる動線の中で、計24点の作品と対峙していきます。館内ではスリッパに履き替え、靴はトートバッグに入れて持ち歩くという形式が取られています。
文化財としての建物を保護するための措置でありながら、その行為自体が空間への意識を変化させる装置として機能しています。床や壁の養生もまた、作品の演出と静かに重なり合い、鑑賞者の視線を自然と作品へと導いていきます。
談話室、キッチン、バスルーム、茶室──
生活の痕跡を残す空間に作品が配置されることで、展示は単なる“鑑賞”ではなく、私的な空間へ入り込むような体験へと変化していきます。これは、マルジェラが重視する“親密さ”そのものとも言えそうです。
都市の中の静寂へ 最後の作品を見終えると、来場者は再び靴に履き替え、細い階段を上って中庭へと抜けていきます。
そこには、都心とは思えないほどの静寂と、青々とした緑が広がっています。
展示の余韻は、屋外へと開かれたこの空間でゆるやかに続き、やがてミュージアムショップへとつながっていきます。図録やトートバッグ、Tシャツに加え、スタッフが着用している法被も販売されており、展示体験はプロダクトとして持ち帰ることも可能です。
再び東京で マルジェラにとって、住宅空間を舞台に作品を展開する試みは初めてではありません。2000年には、東京・恵比寿の邸宅を用いた店舗をオープンし、浴室やキッチンを含む空間全体にコレクションを展示しました。
それから四半世紀。
2026年、再び東京に戻り、歴史的住宅で作品を発表するという選択は、必然とも言える流れかもしれません。
「各部屋の親密な空間の中で作品と出会い、驚きを感じてもらえたら」
──その言葉どおり、本展は都市の中にひらかれた、極めて個人的な体験として立ち現れています。
【INFORMATION】
MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE
会期:2026年4月11日(土)~5月5日(火)※延長
時間:10:00~19:00(最終入場18:00)※JST
※4月29日のみ17:00閉館(最終入場16:00)
会場:九段ハウス
住所:東京都千代田区九段北1-15-9
料金:一般 2,500円(税込)