錦山窯120年「旦 ASHITA」──伝統は、変わり続けることで受け継がれる
伝統を守るとは、どういうことなのでしょうか。受け継いだ技法を忠実に再現すること。先人が築いた美意識を変えることなく後世へ伝えること。もちろん、それも伝統を継承するひとつの方法です。しかし、時代が変わり、人々の暮らしや価値観が変化していくなかで、伝統そのものが変わらずにあり続けることはできるのでしょうか。
「変わり続けるために守り、変わらないでいるために変わる。」
この言葉を展覧会のステートメントに掲げたのが、石川県小松市に窯を構える九谷焼の窯元、錦山窯(きんざんがま)です。
photo by ©FASHION HEADLINE
2026年に開窯120周年を迎えた錦山窯は、東京・六本木のAXIS ギャラリーで記念展「旦 ASHITA」を開催しました。四代目当主の吉田幸央(よした・ゆきお)氏の作品と、氏が率いる錦山窯の作品を通じて、代々受け継がれてきた金彩の技法から、テクノロジーや異分野のアーティストとの協業まで、その現在地と未来への展望を紹介しています。
そこに見えてくるのは、伝統を完成されたものとして保存するのではなく、時代とともに育て続けようとする姿勢です。
120年にわたって受け継がれてきた、変化するという姿勢
錦山窯の歴史は、1906年に初代・吉田庄作が石川県小松市高堂町で九谷焼の上絵付を始めたことに遡ります。明治以降の九谷焼を代表する画風のひとつ「彩色金襴手(さいしょくきんらんで)」を得意とした初代以来、錦山窯のものづくりを特徴づけてきたのは、金を用いた装飾技法です。その技術を大きく発展させたのが、三代目の吉田美統(みのり)氏でした。
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美統氏は、金箔や金粉による文様の上から釉薬を掛けて焼成する「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」の技法を極め、国の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されました。しかし、その歩みは、古くからの方法をただ守り続けるものではありませんでした。制作の現場では、職人の負担を軽減するために攪拌機を取り入れたり、それまで使用していなかった材料を試したりと、技術の可能性を広げるための新しい試みを続けていたといいます。
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四代目の幸央氏もまた、その精神を受け継いでいます。
興味深いのは、父と息子が必ずしも同じ表現を目指していないということです。幸央氏は、同じ遺伝子を持っていても、自分と父はまったく違うと語ります。それでも、両者には伝統をつないでいるという感覚がある。受け継がれているのは、ひとつの完成された様式だけではなく、新しい表現へ挑み続ける意志でもあるのです。
金彩の伝統を、現代の暮らしへ
その考え方は、錦山窯が展開する「KINZAN」の作品にも表れています。四代にわたり継承されてきた金彩の技術を、現代の暮らしに届けるプロダクトシリーズです。なかでも「華鳥夢譚(Kachoumutan)」は、窯元のアーカイブに残る伝統意匠を現代の色彩感覚によって再解釈した作品群です。
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ここで重要なのは、伝統技法を現代風に装飾し直すことだけではありません。器の使い方や見せ方そのものを、使い手に委ねていることです。決められた用途に従うのではなく、手にした人が自由に組み合わせ、新しい景色をつくる。そこでは、つくり手の技術と使い手の創造性がひとつの作品のなかで出会います。
工芸を特別な鑑賞対象として閉じ込めるのではなく、現代の生活や感性と結びつける。その実践もまた、錦山窯にとっての伝統の継承なのでしょう。
テクノロジーは、職人の創造性をどこまで広げられるのか
今回の展覧会で、錦山窯の新たな可能性を示しているのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)との共同プロジェクトです。
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Tomonamiは、単に作品の図案を自動生成するための仕組みではありません。アーティストにとって意味のあるイメージを生み出すためのルールをパラメータとして設計し、独自のソフトウェアを通じて、これまでとは異なる発想や選択肢を探索できる環境を提供するものです。その根底にあるのは、創造性を「新しいアイデアを考える力」と「それを評価する力」という二つの要素から捉え、テクノロジーによってその可能性を広げようとする考え方です。幸央氏が興味を持ったのも、制作工程を機械に置き換えることではなく、創造のプロセスそのものに新しい刺激を与えることでした。
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伝統工芸の世界では、長い年月をかけて技術を習得し、素材や技法への理解を深めることが重要です。その蓄積は、作家の表現を支える大きな力になります。一方で、経験を重ねるほど、自分のなかに一定の思考パターンが生まれることもあります。
ここでは、伝統技法とテクノロジーは対立するものではありません。長年培ってきた技術があるからこそ、新しい発想を作品へと昇華できるのです。
詩人が器に刻む言葉。工芸とパンクが出会うとき
もうひとつ、今回の展覧会を象徴するのが、音楽家、詩人、タギングアーティストとして活動する山崎円城(やまさき・まどき)氏との共同制作です。二人の出会いは、2025年10月に錦山窯のギャラリー「嘸旦(むたん)」で開催された、山崎氏率いるポエトリージャズバンド「F.I.B JOURNAL」のライブセッションに遡ります。
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静謐な工芸の空間と、即興性や反骨精神を持つ音楽表現。
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撥水剤を塗った素地に、一文字ずつ言葉を彫り込んでいく。下書きはありません。山崎氏は、身体に大きな負担のかかる作業を繰り返しながら、詩や言葉を器の表面に刻んでいきました。その手法は、岩などに図像や記号を刻む古代のペトログリフを思わせます。そして、山崎氏が刻んだ言葉を受け取った幸央氏が、その上から色を重ね、さらに金箔を施していきます。
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この共同制作で興味深いのは、完成形が最初から共有されていたわけではないことです。幸央氏は、山崎氏の制作過程をあえて詳しく見ないようにしていたと語ります。あまりにも大変な作業を目にすれば、その上から大胆な表現を重ねることをためらってしまうかもしれないからです。一方の山崎氏も、自分がどれほど自由に表現しても、最後は幸央氏が受け止めてくれるという信頼を感じていたといいます。
完成形に向けて技術を磨き上げる工芸と、その瞬間に生まれる表現を大切にする音楽や詩。異なる創造の方法が出会い、互いの予測を超えていく。そこには、単に異分野のアーティストが協業したという以上の意味があります。
工芸も音楽も、「時間の芸術」である
山崎氏との対話を通じて、幸央氏が見いだした共通項があります。それが「時間」です。山崎氏にとって、音楽は時間の芸術です。演奏するその瞬間に生まれる表現であり、同じ時間を共有する人々の存在によっても変化していきます。一方、幸央氏は、工芸もまた時間の芸術であると考えます。
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器は完成した瞬間だけで価値が決まるものではありません。使い続けることで変化し、経年によって生まれる表情が新たな美しさとなることもあります。詩や言葉も同じです。書かれたときの意味が、別の人に読まれ、異なる場所へ運ばれることで変わっていく。今回の共同作品も、山崎氏が刻んだ言葉に幸央氏が金箔を重ね、その金箔が年月とともに変化していけば、また別の表情を見せるかもしれません。
作品は、つくられた瞬間に完成するだけではなく、その後も時間のなかで生き続ける。この考え方は、120周年という節目にも重なります。錦山窯が積み重ねてきた120年は、過去の出来事として閉じられたものではありません。今の作品のなかに息づき、これから先の時間へと続いていくものです。 「旦 ASHITA」──伝統を育て、次の百年へ 展覧会のステートメントは、山崎氏が錦山窯での滞在制作中に生み出した詩「変わらないでいるために、変わる」への応答から生まれました。 「変わり続けるために守り、変わらないでいるために変わる。」 一見すると矛盾するこの言葉は、錦山窯が120年にわたり実践してきたものづくりの姿勢を表しています。そして、幸央氏は伝統について、印象的な言葉を残しています。 「私が考える『伝統』とは、守るとか繋ぐといったものよりも『育てる』という感覚が一番近いです」 育てるということは、変化を受け入れることでもあります。環境や時代に合わせて方法を見直し、ときには異なる価値観を取り入れながら、その本質を次へとつないでいく。今回、会場に選ばれたのが、1981年の誕生以来、デザインとテクノロジーの可能性を発信してきたAXIS ギャラリーであることも象徴的です。
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伝統工芸を、工芸という領域のなかだけで語らない。デザインやテクノロジー、音楽、詩といった異なる表現のなかに置くことで、その可能性を問い直していく。それは、伝統を過去から受け取った完成品として扱うのではなく、未来に向けて更新し続ける営みでもあります。 錦山窯の120年を振り返る「旦 ASHITA」が見つめているのは、過去の栄光だけではありません。変わることを恐れず、しかし、受け継いできたものを決して手放さない。伝統とは、変わらないものではなく、変わり続けることで生き続けるものなのかもしれません。
INFORMATION
錦山窯 開窯120周年記念展「旦 ASHITA」- YOSHITA Yukio Exhibition -
会期:2026年10月9日(金)〜10月13日(火)
時間:11:00〜18:00(最終日は17:00まで)
会場:AXIS ギャラリー
住所:東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4F
※本展は2026年10月13日をもって終了しました。
「変わり続けるために守り、変わらないでいるために変わる。」
この言葉を展覧会のステートメントに掲げたのが、石川県小松市に窯を構える九谷焼の窯元、錦山窯(きんざんがま)です。
2026年に開窯120周年を迎えた錦山窯は、東京・六本木のAXIS ギャラリーで記念展「旦 ASHITA」を開催しました。四代目当主の吉田幸央(よした・ゆきお)氏の作品と、氏が率いる錦山窯の作品を通じて、代々受け継がれてきた金彩の技法から、テクノロジーや異分野のアーティストとの協業まで、その現在地と未来への展望を紹介しています。
そこに見えてくるのは、伝統を完成されたものとして保存するのではなく、時代とともに育て続けようとする姿勢です。
120年にわたって受け継がれてきた、変化するという姿勢
錦山窯の歴史は、1906年に初代・吉田庄作が石川県小松市高堂町で九谷焼の上絵付を始めたことに遡ります。明治以降の九谷焼を代表する画風のひとつ「彩色金襴手(さいしょくきんらんで)」を得意とした初代以来、錦山窯のものづくりを特徴づけてきたのは、金を用いた装飾技法です。その技術を大きく発展させたのが、三代目の吉田美統(みのり)氏でした。
美統氏は、金箔や金粉による文様の上から釉薬を掛けて焼成する「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」の技法を極め、国の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定されました。しかし、その歩みは、古くからの方法をただ守り続けるものではありませんでした。制作の現場では、職人の負担を軽減するために攪拌機を取り入れたり、それまで使用していなかった材料を試したりと、技術の可能性を広げるための新しい試みを続けていたといいます。
四代目の幸央氏もまた、その精神を受け継いでいます。
伝統技法を学び、磨き続ける一方で、現代の感性を取り入れた金彩表現を追求し、工芸という領域の外にある技術や表現にも積極的に目を向けてきました。
興味深いのは、父と息子が必ずしも同じ表現を目指していないということです。幸央氏は、同じ遺伝子を持っていても、自分と父はまったく違うと語ります。それでも、両者には伝統をつないでいるという感覚がある。受け継がれているのは、ひとつの完成された様式だけではなく、新しい表現へ挑み続ける意志でもあるのです。
金彩の伝統を、現代の暮らしへ
その考え方は、錦山窯が展開する「KINZAN」の作品にも表れています。四代にわたり継承されてきた金彩の技術を、現代の暮らしに届けるプロダクトシリーズです。なかでも「華鳥夢譚(Kachoumutan)」は、窯元のアーカイブに残る伝統意匠を現代の色彩感覚によって再解釈した作品群です。
金彩による文様を施したグラスや鉢、蓋付きのカップなどを自由に組み合わせ、積み重ねることで、器は食卓の道具であると同時に、空間を構成するオブジェへと変化します。
ここで重要なのは、伝統技法を現代風に装飾し直すことだけではありません。器の使い方や見せ方そのものを、使い手に委ねていることです。決められた用途に従うのではなく、手にした人が自由に組み合わせ、新しい景色をつくる。そこでは、つくり手の技術と使い手の創造性がひとつの作品のなかで出会います。
工芸を特別な鑑賞対象として閉じ込めるのではなく、現代の生活や感性と結びつける。その実践もまた、錦山窯にとっての伝統の継承なのでしょう。
テクノロジーは、職人の創造性をどこまで広げられるのか
今回の展覧会で、錦山窯の新たな可能性を示しているのが、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)との共同プロジェクトです。
幸央氏は、同研究所のアレクシー・アンドレ(Alexis André)氏が取り組む「Creativity Acceleration(創造性の加速)」の研究から生まれたシステム「Tomonami(トモナミ)」を活用し、新しい作品制作に挑戦しています。
Tomonamiは、単に作品の図案を自動生成するための仕組みではありません。アーティストにとって意味のあるイメージを生み出すためのルールをパラメータとして設計し、独自のソフトウェアを通じて、これまでとは異なる発想や選択肢を探索できる環境を提供するものです。その根底にあるのは、創造性を「新しいアイデアを考える力」と「それを評価する力」という二つの要素から捉え、テクノロジーによってその可能性を広げようとする考え方です。幸央氏が興味を持ったのも、制作工程を機械に置き換えることではなく、創造のプロセスそのものに新しい刺激を与えることでした。
伝統工芸の世界では、長い年月をかけて技術を習得し、素材や技法への理解を深めることが重要です。その蓄積は、作家の表現を支える大きな力になります。一方で、経験を重ねるほど、自分のなかに一定の思考パターンが生まれることもあります。
幸央氏は、そうした思考の枠を打ち破る手段として、テクノロジーに可能性を見いだしています。職人の手を不要にするためではなく、熟練した手がまだ出会ったことのない表現へ辿り着くために。
ここでは、伝統技法とテクノロジーは対立するものではありません。長年培ってきた技術があるからこそ、新しい発想を作品へと昇華できるのです。
詩人が器に刻む言葉。工芸とパンクが出会うとき
もうひとつ、今回の展覧会を象徴するのが、音楽家、詩人、タギングアーティストとして活動する山崎円城(やまさき・まどき)氏との共同制作です。二人の出会いは、2025年10月に錦山窯のギャラリー「嘸旦(むたん)」で開催された、山崎氏率いるポエトリージャズバンド「F.I.B JOURNAL」のライブセッションに遡ります。
静謐な工芸の空間と、即興性や反骨精神を持つ音楽表現。
一見すると対照的な両者ですが、その出会いは、約半年間にわたるレジデンス制作へと発展しました。山崎氏が取り組んだのは、器の素地に言葉を直接刻み込むという表現です。当初は釉薬ペンを使うことを考えていたものの、自身の筆跡が十分に表れなかったことから、千枚通しのような道具で器の表面を彫る方法に辿り着いたといいます。
撥水剤を塗った素地に、一文字ずつ言葉を彫り込んでいく。下書きはありません。山崎氏は、身体に大きな負担のかかる作業を繰り返しながら、詩や言葉を器の表面に刻んでいきました。その手法は、岩などに図像や記号を刻む古代のペトログリフを思わせます。そして、山崎氏が刻んだ言葉を受け取った幸央氏が、その上から色を重ね、さらに金箔を施していきます。
言葉が浮かび上がり、隠れ、再び現れる。詩人の身体的な表現と、金彩を極めてきた工芸家の技術が、ひとつの器の上で重なり合うのです。
この共同制作で興味深いのは、完成形が最初から共有されていたわけではないことです。幸央氏は、山崎氏の制作過程をあえて詳しく見ないようにしていたと語ります。あまりにも大変な作業を目にすれば、その上から大胆な表現を重ねることをためらってしまうかもしれないからです。一方の山崎氏も、自分がどれほど自由に表現しても、最後は幸央氏が受け止めてくれるという信頼を感じていたといいます。
完成形に向けて技術を磨き上げる工芸と、その瞬間に生まれる表現を大切にする音楽や詩。異なる創造の方法が出会い、互いの予測を超えていく。そこには、単に異分野のアーティストが協業したという以上の意味があります。
工芸も音楽も、「時間の芸術」である
山崎氏との対話を通じて、幸央氏が見いだした共通項があります。それが「時間」です。山崎氏にとって、音楽は時間の芸術です。演奏するその瞬間に生まれる表現であり、同じ時間を共有する人々の存在によっても変化していきます。一方、幸央氏は、工芸もまた時間の芸術であると考えます。
器は完成した瞬間だけで価値が決まるものではありません。使い続けることで変化し、経年によって生まれる表情が新たな美しさとなることもあります。詩や言葉も同じです。書かれたときの意味が、別の人に読まれ、異なる場所へ運ばれることで変わっていく。今回の共同作品も、山崎氏が刻んだ言葉に幸央氏が金箔を重ね、その金箔が年月とともに変化していけば、また別の表情を見せるかもしれません。
作品は、つくられた瞬間に完成するだけではなく、その後も時間のなかで生き続ける。この考え方は、120周年という節目にも重なります。錦山窯が積み重ねてきた120年は、過去の出来事として閉じられたものではありません。今の作品のなかに息づき、これから先の時間へと続いていくものです。 「旦 ASHITA」──伝統を育て、次の百年へ 展覧会のステートメントは、山崎氏が錦山窯での滞在制作中に生み出した詩「変わらないでいるために、変わる」への応答から生まれました。 「変わり続けるために守り、変わらないでいるために変わる。」 一見すると矛盾するこの言葉は、錦山窯が120年にわたり実践してきたものづくりの姿勢を表しています。そして、幸央氏は伝統について、印象的な言葉を残しています。 「私が考える『伝統』とは、守るとか繋ぐといったものよりも『育てる』という感覚が一番近いです」 育てるということは、変化を受け入れることでもあります。環境や時代に合わせて方法を見直し、ときには異なる価値観を取り入れながら、その本質を次へとつないでいく。今回、会場に選ばれたのが、1981年の誕生以来、デザインとテクノロジーの可能性を発信してきたAXIS ギャラリーであることも象徴的です。
伝統工芸を、工芸という領域のなかだけで語らない。デザインやテクノロジー、音楽、詩といった異なる表現のなかに置くことで、その可能性を問い直していく。それは、伝統を過去から受け取った完成品として扱うのではなく、未来に向けて更新し続ける営みでもあります。 錦山窯の120年を振り返る「旦 ASHITA」が見つめているのは、過去の栄光だけではありません。変わることを恐れず、しかし、受け継いできたものを決して手放さない。伝統とは、変わらないものではなく、変わり続けることで生き続けるものなのかもしれません。
INFORMATION
錦山窯 開窯120周年記念展「旦 ASHITA」- YOSHITA Yukio Exhibition -
会期:2026年10月9日(金)〜10月13日(火)
時間:11:00〜18:00(最終日は17:00まで)
会場:AXIS ギャラリー
住所:東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4F
※本展は2026年10月13日をもって終了しました。