ヴィヴィアン・サッセンがG/P galleryで単独展。現代写真家としての顔に迫る
ヴィヴィアン・サッセンがG/P galleryで単独展。現代写真家としての顔に迫る
サッセンは、昨年年間を通して資生堂『花椿』の表紙を撮り下ろし、パルコの年間シーズン広告キャンペーンをエムエムパリ(M/M Paris)と共に製作しており、国際的な知名度に合わせて、日本国内での活躍も目立ってきた写真家だ。今まで「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」や「ミュウミュウ(miu miu)」「カルヴェン(CARVEN)」などのラグジュアリーブランドの広告写真や、『アイディー(iD)』『デイズド・アンド・コンフューズド(Dazed and Confuzed)』などのインディペンデント誌でのエディトリアルを手掛け、ファッションフォトグラファーとして知名度を上げてきたが、最近ではファッションに限らず、より広義なコンテンポラリーアートフォトグラファーとして認識されつつある。
今回の展示では、そんな彼女のパーソナルな二つのプロジェクトを取り上げている。
恵比寿での展示は、南米の旧オランダ領スリナムにある熱帯雨林が生い茂る街、ピキン・スリー(Pikin Slee)で現地の人々や生活の風景を被写体に撮影したモノクロのシリーズが展示されている。2012年に制作されたこのシリーズは、ドキュメント的な要素と力強いグラフィカルな構図が、他の彼女の作品と同様に、ドキュメンタリーとファインアートの領域について考えさせる。「南アメリカのジャングルで、現地の人にオランダ語が通じることは、歴史の悪戯」とサッセンは話す。ロケーションが旧オランダ領であるという意味でも、自身のルーツを探るパーソナルなシリーズだ。
作品が持つどこかアウトサイダー的な視線も、アウトサイダーとして他国で育った自らの原体験とリンクしているのだろう。
東雲で展示されているシリーズ「レキシコン(Lexicon)」は、2013年のヴェネチアビエンナーレ企画展にてサッセンがキュレーターのマシミリアノ・ジオーニ(Massimiliano Gioni)と共に既存の作品を“直感”で選んだ31点で構成されている。サッセンは出身国のオランダ・アムステルダムを拠点に活動しているが、自身がケニアで育った経験から、ガーナ、タンザニア、ザンビア、ウガンダなどアフリカ諸国で現地の人を被写体に撮った作品が多数ある。その中からランダムに選ばれた31点は、まるでコラージュ作品に見える程、光と影の強い対比とグラフィカルな構図が特徴だ。また、「死」を意識させるシチュエーションが扱われ、被写体の顔やロケーションが不明瞭なこととから、鑑賞者の共感を誘う意味で、作品と観客の距離が近い。
ビエンナーレのテーマの一部だった、「無意識や超エゴ、マニアックな世界観」を作り上げるために「パーソナル」な作品を制作するアーティスト達を探し求めたジオーニが、彼女の作品をピックアップしたのも、このような、彼女の写真に向かう真摯な姿勢もあってのことではないだろうか。
ヴィヴィアン・サッセンがG/P galleryで単独展。現代写真家としての顔に迫る
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