虎ノ門ヒルズにしゃがむ白い巨人像。「時と言葉」を考える【冬に感じる恋とアート】
Photo by Sayaka.O (C)FASHION HEADLINE
東京・虎ノ門、Andazホテルのアンダーズ タヴァンから、漆黒の空と東京の夜景を見ている。甘苦く冷たいジンが口の中に広がる。めまぐるしく過ぎる日々のなかで漠然と募る焦りを窓の景色に問い掛けていた。空回りし始めた時間の速度を少しやわらげるために、今夜はこの51階に来た。目の前に景色として現れた東京は、地上にいるときより数段優しい。色とりどりの光をやわらかく包み込み、静けさに変える冬の空を見ていると、不安は遠のき、時間がまた少しずつ私のもとに戻ってくるように感じた。東京の夜空を離れ、地上に戻ろうとオフィスとは逆のエントランスを出ると、オーバル広場の巨大な彫刻が私を待っていた。
スペインを代表するアーティスト ジャウメ・プレンサの彫刻「ルーツ」。日本語、中国語、アラビア語、ヘブライ語、ラテン語、ギリシャ語、 ヒンディー語、ロシア語の八つの言語が、膝を抱えて座る巨大な人型の像となって白く浮かび上がる。遠い昔から意思の疎通や記録という、個人を超え、時間を超えるコミュニケーションのために生まれ、培われてきた言葉。言葉で形作られた人型の模型は、上も下も向かず、ただまっすぐ前を向いて座っている。