西陣が奏でる音を絶やしたくない--西陣織細尾・細尾真孝【京都のクリエーティブユニット「GO ON」2/5】
幾重ものストラクチャーにより、実に表情豊かな織が仕上がる
この30年で着物産業が約10分の1に縮小する中、「シャネル(CHANEL)」「ディオール(Dior)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」など、名だたるラグジュアリーメゾンの店舗インテリアに採用されているのが西陣織の老舗「細尾」の織物だ。
京都で育まれた西陣織には約20の工程があり、それぞれの工程がその専門家に分業されている。ある職人は西陣織の特色の一つである箔を張った和紙を髪の毛より細い繊維に切る部分を担当し、ある人は織機の数千本の経糸を張り替えることを生業とする。これらの西陣織の匠達は上京区を中心に半径7km圏内に集まっているという。
細尾真孝は海外ブランドからのオーダーが絶えない今の状況にいたるまでをこう振り返る。「二つの転機がありました。一つは帯に特化した従来の32cm幅の織り機を応用し、150cm幅で織れる織機を自社で開発した時です」。これによって西陣織の使われるアイテムがインテリアや洋服にと格段に広がった。
2010年から毎年1台ずつ幅広の織機を増やし、現在は5台の織機がリズミカルな音を響かせる。織り幅を変えるという大胆な挑戦により、西陣織がパリコレクションのランウエイや世界各国のラグジュアリーブランドのショップインテリアとして、新たな活躍の場を得ることとなった。