キディル 2025年秋冬コレクション - アナキズム、あるいは今に生き直すパンクの精神
一見すると、「フォーマル」のオーセンティシティとは、形式性に抗う「アナキズム」やパンクとは相反するものだろう。しかし、デザイナーの末安はそこに、パンクという過去の表現に、襟を正して向き合わなければならないという、ある種の真摯さを込めているようだ。
この、アナキズムに対してオーセンティシティを組み合わせるニュアンスについては後述するとして、まずはコレクション自体に目を向けるのならば、パンクのアグレッシヴさは全体に鳴り響きつつ、そこには文字通り「襟を正す」端正さの要素を認めることができる。タータンチェックのファブリックで仕立てたテーラードジャケットはその一例であるし、オーバーサイズのドレスシャツも、オーセンティシティのベクトルにのせられるだろう。
むろん、相異なる要素が激しく対峙する、パンク的とも形容できるデザインは、コレクション全体に見ることができる。ボンバージャケットには、トラディショナルなタータンチェックをミックス。ジャンプスーツは、ボトムス部分をデニムに切り替え。アノラックには、メタリックなきらめきを帯びたカモフラージュ柄をのせて。
あるいはコレクション全体にわたって、多彩なグラフィックのプリントを自在に散りばめている。