メルシーボークー, 2016-17年秋冬コレクション - 日本ができるまで
メルシーボークー,(mercibeaucoup,)は、「日本の神話」をテーマにした2016年秋冬コレクションを発表。
イザナギとイザナミという2人の神によって創られた日本。やがてそこに住み始めた人間のために2人は力を合わせて国造りを進めていくのだが、その途中でイザナミは亡くなってしまう。時を経ても悲しみが癒えなかったイザナギは、死者の国である“黄泉の国”に足を運ぶことにする。しかし、そこで見たのは雷神が宿り、変わり果てたイザナミの姿。殺そうと追いかけてくるイザナミと鬼たちに追われながら、イザナギは元の世界へ必死で逃げ戻る。疲れ果てた彼の前に現れたのは、天照大御神らであった……。
まだまだ話は続くのだが、今シーズン描かれたのはここまでの話。
これらは顕著に洋服に落とし込まれた。日本古来より使われている麻素材に特にこだわり、綿、ウールなど国産の天然素材を中心にゴブラン織り、ジャガードやリボン刺繍などで世界を表現。伝統的な麻の葉柄、風神と雷神、鬼を追い払う時に用いたブドウの実や筍、桃の実が、ランダムにあしらわれている。そして、重要な登場人物であるイザナギとイザナミは、マルチなカラーでコレクションに彩りを加えた。
ディテールには、2人が創り上げた日本列島そのもののパッチワークや、しめ縄のような模様、さらには神社でよく見る紙垂(しで)を模したモチーフまでが揃う。また、アイテムの名前もユニークで、例えば「クニウミソー」と名付けられた国と海を描いたカットソーがある。身に着けている洋服に隠れた物語を、友人たちに思わず話たくなってしまうような楽しい提案がなされた。
デザイナー宇津木は今季のテーマについてこう話す。
「最近、自分自身が自然栽培を始め、日本の食のものづくりに興味を持ち始めました。そこから、改めて“日本”を考えることに。蓋をあけたら、とても面白い話があった。それを形にしようと思いました。」
ボーダレスな時代、海外に目を向けがちな今だからこそ、日本の良さを再考する場として今回のコレクションが完成したのだろう。人間の欲望にはきりがない。欲深くならずに満足することができる人は、心が富んでいるということ。それが、今季のサブテーマとして掲げられた“足るを知る”。メルシーボークー,の洋服が、そのきっかけとなれば嬉しい、そんな想いが感じられるような気がした。
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