ミュシャ展 国立新美術館で開催-巨大傑作《スラヴ叙事詩》全20作チェコ国外、世界初公開
「ミュシャ展」が六本木・国立新美術館にて開催される。期間は2017年3月8日(水)から6月5日(月)まで。「スラヴ叙事詩」の全20点がチェコ国外で展示される初めての展覧会だ。
チェコの最も有名で重要な芸術家アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)の足跡を追う「ミュシャ展」は、彼が27歳でパリに渡り活躍した時代の作品から、故郷チェコで制作した晩年の傑作までを鑑賞することができる。会場では、約100点の作品に出会うことができる。
国立新美術館 開館 10周年・チェコ文化事業
ミュシャ展
会期:2017年3月8日(水)~6月5日(月)
休館日:毎週火曜日(ただし、5/2(火)は開館)
開館時間:10:00~18:00 ※毎週金曜日4/29~5/7は20:00まで開館。(入場は閉館の30分前まで)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
■通常券(チケット情報)
観覧料(税込)
当日券 前売/団体
・一 般1,600円/1,400円
・大学生 1,200円/1,000円
・高校生 800円/600円
※中学生以下無料
※団体は20名以上
※障がい者とその付き添いの方1名は無料(入場の際に障がい者手帳などを提示)
【問い合わせ】
ハローダイヤル
TEL:03-5777-8600
ミュシャ展をガイド
国立新美術館での展示は、大きく5つの展示に分かれている。入り口からすぐに現れるのが「スラヴ叙事詩」のゾーン。
全20作品をすべて鑑賞できる素晴らしい展示会場だ。その中でも、スラブ叙事詩の奥の5作品が飾られているゾーンは、一般の撮影も可能となっている。展示作品は「スラヴ民族の賛歌」、「ロシアの農奴制廃止」、「スラヴ菩提樹の下でおこなわれる オムラジナ会の誓い」、「聖アトス山」、「イヴァンチツェの兄弟団学校」だ。
ミュシャとは?
アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)。正式な名前はアルフォンス・マリア・ムハ(Alfons Maria Mucha)。フランス語では「ミュシャ」と発音され、日本ではそちらの方が有名だ。
ミュシャは、1860年、現在のチェコ共和国にある南モラヴィア地方の中心都市ブルノの近郊で生まれた。南モラヴィア地方は100km2に7つのユネスコ世界遺産を有し、ワインの名産地として知られる場所だ。
幼少期と青年期をこの地方で過ごし、27歳でパリに渡る。
伯爵の援助を受けて、パリのアカデミー・ジュリアンで絵画を学んでいた若き学生の頃は、なかなか才能が認められない時期があった。援助が途絶えると、ミュシャはポスターやグラフィック、本の挿絵を手掛けることで生計を立てるようになる。
転機となったのは、ミュシャが34歳の時に、女優サラ・ベルナール主演の舞台「ジスモンダ」のポスターを手がけたことだ。一躍成功をおさめた。そして、その優美な作風は次第に多くの人々を魅了するようになる。どこか神秘的でありながら、美しい女性像、繊細な植物文様、エレガントな装飾パネルは、彼の後を追うアーティストに、大きな影響を与えた。
晩年、ミュシャが拘ったのは、ルーツである故郷のチェコ、そしてスラヴ民族のアイデンティティであろう。
彼はそこに根差したテーマの作品を次々と発表していく。50歳で故郷チェコに戻り、《スラヴ叙事詩》の制作に着手。約16年間もの時間を捧げ、1928年プラハの見本市宮殿にて展示した。1939年、79歳でプラハにて死去した。
スラヴ叙事詩全20点が初めてチェコ以外の国で公開
目玉となるのは、およそ縦6m×横8mにもおよぶ巨大な油彩画全20点で構成される傑作《スラヴ叙事詩》だ。50歳でチェコに戻ったミュシャが、故郷に対する強い想いに駆られ、後半生を賭けて制作した。古代から近代に至るスラブ民族の歴史が象徴的に描かれており、チェコの宝として今まで国外に出ることはなかった作品だ。全20作がチェコ国外で公開されるのは世界初となるため、注目が集まる。
スラヴ叙事詩展示風景動画も
《スラヴ叙事詩》という巨大な作品は、どのように展示されたのか。その模様を収めた動画も公開。作品は丸められて運ばれてきて、それを広げ、フレームにロープでくくりつけている。最後に、数人がかりで作品を起こし、展示している。作業している人たちの背中には「ミュシャ団」の文字が。和気あいあいとした展示風景だ。
会場1「ミュシャとアール・ヌーヴォー」
1894年のクリスマス。印刷業者ルメルシエが、女優サラ・ベルナール主演によるルネサンス座の舞台「ジスモンダ」のポスター制作を急遽ミュシャに依頼したことがきっかけで、彼は有名になる足がかりを掴んだ。
サラ・ベルナールの信頼を勝ち得たミュシャは、その後も《ロレンザッチオ》(1896年)や《メディア》(1898年)、《ハムレット》(1899年)、《トスカ》(1899年)など、ベルナールの舞台の宣伝ポスターや商業ポスターを手がけている。ほぼ等身大の崇高な雰囲気のあるポスターは、ミュシャを著名な画家へと押し上げた。
会場2「世紀末の祝祭」
ミュシャはポスターやグラフィックだけではなく、建物の装飾も請け負っていた。代表的なのは、1910年にはチェコの社会や文化の中心として建設された市民会館。その「市長の間」の装飾は、ミュシャが行っている。
円形の天井には、天国の情景や天国を遠くに望みながら集まる人々の姿、それに影を落とすように羽根を広げ飛翔する鷲の姿が描かれた。天井は8つの穹偶よって支えられ、その上部には市民の徳を擬人的に表現したチェコの歴史上の人物像が描かれている。
当時、チェコはオーストリア=ハンガリー帝国の支配下にあったが、1918年、市民会館は、チェコスロヴァキア共和国が独立を宣言した舞台となり、国家の象徴としての役割を果たすこととなる。
会場3「独立のための闘い」ミュシャが故郷を想って制作した作品たち
ミュシャの晩年の作品は、新生国家チェコスロヴァキアの依頼を受けて制作されたものが多い。紙幣や切手のほかにも、白獅子の国章、警官の制服、聖ヴィート大聖堂のステンドグラスなどもデザインした。そして、この新興国の発展に尽力すべく、切手、紙幣、国章、警官の制服などのデザインは、全て無報酬で手がけた。
ミュシャが自身の故郷や民族を意識して制作した作品の数々。故郷も含めて、小国が独立を求める闘いの時代であった1900年代初頭において、ミュシャはチェコ国民の文化的な支えであり続けたのだろう。チェコスロヴァキア独立10周年記念ポスターを制作するなど、ミュシャは国民の民族自決の長年にわたる闘いに有終の美を飾っている。
会場4「習作と出版」カタログの表紙、素描など
最後のゾーンとなる「習作と出版物」では、細やかな装丁や挿絵、カタログの表紙などを展示。ミュシャは晩年、《スラヴ叙事詩》と並行して、スラヴの人々をモデルにした習作やデッサンを数多く描いた。
人物の服装や表情に対する彼の注意深い観察は、デッサンの時点で伺うことができる。
展覧会概要
国立新美術館 開館 10周年・チェコ文化事業
ミュシャ展
会期:2017年3月8日(水)~6月5日(月)
休館日:毎週火曜日(ただし、5/2(火)は開館)
開館時間:10:00~18:00 ※毎週金曜日4/29~5/7は20:00まで開館。(入場は閉館の30分前まで)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
■通常券(チケット情報)
観覧料(税込)
当日券 前売/団体
・一 般1,600円/1,400円
・大学生 1,200円/1,000円
・高校生 800円/600円
※中学生以下無料
※団体は20名以上
※障がい者とその付き添いの方1名は無料(入場の際に障がい者手帳などを提示)
【問い合わせ先】
ハローダイヤル
TEL:03-5777-8600