ミュシャ展 国立新美術館で開催-巨大傑作《スラヴ叙事詩》全20作チェコ国外、世界初公開
代表的なのは、1910年にはチェコの社会や文化の中心として建設された市民会館。その「市長の間」の装飾は、ミュシャが行っている。
円形の天井には、天国の情景や天国を遠くに望みながら集まる人々の姿、それに影を落とすように羽根を広げ飛翔する鷲の姿が描かれた。天井は8つの穹偶よって支えられ、その上部には市民の徳を擬人的に表現したチェコの歴史上の人物像が描かれている。
当時、チェコはオーストリア=ハンガリー帝国の支配下にあったが、1918年、市民会館は、チェコスロヴァキア共和国が独立を宣言した舞台となり、国家の象徴としての役割を果たすこととなる。
会場3「独立のための闘い」ミュシャが故郷を想って制作した作品たち
ミュシャの晩年の作品は、新生国家チェコスロヴァキアの依頼を受けて制作されたものが多い。紙幣や切手のほかにも、白獅子の国章、警官の制服、聖ヴィート大聖堂のステンドグラスなどもデザインした。そして、この新興国の発展に尽力すべく、切手、紙幣、国章、警官の制服などのデザインは、全て無報酬で手がけた。
ミュシャが自身の故郷や民族を意識して制作した作品の数々。故郷も含めて、小国が独立を求める闘いの時代であった1900年代初頭において、ミュシャはチェコ国民の文化的な支えであり続けたのだろう。