「エルメスの手しごと」展、名古屋・博多で開催 - メゾンに受け継がれる職人技を披露
エルメス(HERMÈS)のイベント「エルメスの手しごと」展が3月に行われた東京に引き続き、名古屋、博多にて開催される。名古屋は2017年10月4日(水)から9日(月・祝)まで、博多は2017年10月14日(土)から19日(木)まで。入場は無料。
【名古屋】
会期: 2017年10月4日(水)~9日(月・祝)
時間: 11:00~19:00(最終入場は18:30)
会場: KITTE名古屋 3F JPタワー名古屋 ホール&カンファレンス
名古屋市中村区名駅一丁目1番1号
入場: 無料
【博多】
会期: 2017年10月14日(土)~19日(木)
時間: 11:00~19:00(最終入場は18:30)
会場: JR博多シティ 9F JR九州ホール
福岡市博多区博多駅中央街1番1号
入場: 無料
「エルメスの手しごと」展とは
高級馬具の製造に始まり、バッグ、グローブ、そしてファッションと、その時代の最上質を常に追求してきたエルメス。それを支える様々なメチエ(仕事)の職人たちに、永く受け継がれてきた技を披露する「エルメスの手しごと」展は、クラフツマンシップを讃えるイベントとして2011年に誕生した。
以来、世界各都市にて開催され、2017年3月には初の東京開催を表参道ヒルズで行った。今回、東京開催での好評を得て、名古屋、博多の2都市での開催が決定。これから紹介する写真、内容はともに東京・表参道で行われたものである。
メゾンに受け継がれる10種の手しごと
会場には、メゾンに受け継がれる10種の手しごとのコーナーが並ぶ。その様子は、まるで“アトリエがそのままやってきた”ようだ。
さまざまな素材を、バッグ、鞍、カレ(シルクスカーフ)、ネクタイ、ジュエリー、時計、手袋などのオブジェに変身させる手しごとの数々は滅多に見ることができない。普段はアトリエにいる本物の職人の仕事、熟練の技、情熱を知ることができる貴重な機会だ。
鞍(くら)職人
会場に足を踏み入れると、まず目の前に見えるのが「鞍職人」のコーナー。1837年に馬具工房として誕生したエルメスは、現在も変わらず鞍の製作・販売を行っている。「美しい鞍づくり」は、まさにエルメスのルーツと言っても過言ではない。丁寧に手縫いされた鞍からくる機能性、耐久性、究極の機能美と言うものづくりは、全ての製品に受け継がれた。
また、鞍づくりの技法の中で「サドルステッチ」という、2本の針で表裏から刺し糸が交差するように革を縫い合わせる“極めて強度の高い縫い方”は、バッグづくりにも受け継がれている。これにより、長年の使用に耐えうるバッグが完成する。
クリスタル職人
ここでは、エルメスグループの一員であるクリスタルのメゾン・サンルイと360°VR動画という最新技術の交差から、工房を目の前で体験することができる。
動画は、フランス北東部のヴォージュ山地の森の奥の景色、工房を見下ろす映像から始まる。場面が切り替わると、目の前は工房の中。頭を左右に動かすと、まるでその敷地内にいるかのような気分になる。
巨大な釜の燃えさかる火の中で溶けたクリスタルの種が、職人の息吹で命を吹き込まれていく様子や、職人たちの洗練された所作に注目してみてほしい。
石留め職人
石留め職人は、サファイアやルビー、エメラルド、ダイヤモンドなどの宝石をジュエリーに固定する作業を専門としている。
会場では、馬の頭部をアレンジしたブレスレット「ギャロップ」に、ピンセットでパヴェダイヤモンドを掴み、セッティングする細かな仕事をみることができる。
素材はゴールドとダイヤを使用。石をどのように留めるかというと、「エショップ」と呼ばれるステンレススティール製の針でゴールドのグレイン(爪)を持ち上げ、石をはめたあと、グレインを上に被せるように折り返して固定している。作業が細かすぎるため、顕微鏡の使用もしばしば。
実は、この「ギャロップ」には、約2500個ものダイヤが散りばめられる。だが、1時間に留められる石の数は約10個。制作は1人で行うので、約250時間くらいの時間が必要だ。
なぜ、これほどの時間が必要なのか。
それは、作業の精密さ以上に、石の種類・個性を見分け、ブレスレットの部位によって、美しく輝くようにセッティングしているからだ。例えば、馬の鼻の部分には他のものよりも大きいダイヤをつけ、曲線部分には滑らかで細かいダイヤを留め、オブジェとしての存在感を増している。
エルメスのカレの作り方
様々なカラーで美しい物語を描くエルメスのカレ(スカーフ)は、今でも1枚1枚、人が行うシルクスクリーンで作られている。だが、色をつけるまでには、グラフィックデザイナーと製版職人の仕事が欠かせない。
グラフィックデザイナーは、エルメスのカレの手書きの原画を作り上げる。そして、その原画をデジタルに取り込み、製版職人がシルクスクリーンの型を作るために線と色を付けていく。デザインに忠実に、線、色を付けていくには何十色ものカラーが必要だ。そして、その分、シルクスクリーンの型も増えていく。
つまり、30色で構成されたデザインには、30枚のフレームが必要になる。
シルクスクリーン職人は「フラットフレーム」という技法を用いる。この技法は1930年にリヨンで始まったことから「リヨン式フレーム」とも呼ばれる、職人は、真っ白なシルクツイル地をプリント台に張ったあと、メッシュと呼ばれる薄い布を張ったステンレススティール製のフレームをその上にのせる。
メッシュにインクを流し込み、ゴム製のスクイージーで広げていく。1色ごとにフレームを差し替えながら、布に色を塗り重ね、プリントが終わったら乾かし、色止めをし、洗浄。これでスカーフになる準備が整う。人物のような複雑なデザインは、1っ箇所の表現に15枚ものフレームを使うこともあるそうだ。
エルメスのカレの最後の仕上げを施すのは「縁かがり職人」だ。
カレの縁をくるりと巻き込み縫う“ルロタージュ”と呼ばれるフランス特有の技法を見ることができる。全て手縫いで、カレの4周に均一な針目が並ぶ。正確なテクニックが要求される技法で、シルクツイル、カシミア、シルクモスリンなど、どんな素材でも早く正確に仕上げるためには、長い経験が必要だ。
ネクタイ縫製職人
エルメスのネクタイの最大の特徴、それは1本の糸で、手で縫い上げることだ。エルメスのネクタイの美しさは、手縫いの細やかな仕事に支えられている。
ネクタイ縫製職人が教えてくれた話で印象的だったのは「ネクタイを使用しているうちに出てくる変形は“ある方法”で直せる」ということ。
方法は、ネクタイの中にある1本の糸を引っ張り、一度ネクタイを縮めたあと、もう一度生地を伸ばすこと。職人がネクタイの仕上げに行っている方法で、これは誰にでもできるようになっている。
まさに、一本の糸で作られているからできる技だろう。
手袋職人
まるで、肌そのもののように感じられる手袋を作る職人。来日は今回が初となる。
彼は、手袋用の革を、パイ生地のように、出来る限り引き伸ばす「デペサージュ」と呼ばれる工程により、型崩れしない手袋を作り上げる。実際に触ってみたが、これをやるとやらないとでは、まったく革の心地が異なる。手に馴染んでくる、しなやかで滑らかな革が目の前で出来上がる感動を味わってほしい。
磁器絵付職人
エルメスの食器の絵を手掛ける磁器絵付職人。フランスのリモージュ近郊のアトリエで、特別な作品を手がける職人の技術はきわめて繊細だ。
デザイン画をもとに、磁器を焼いた後、“色をどのくらい近づけられる”か。まず絵の具を混ぜ合わせて、実際に焼き、確かめなければならない。その工程を経てから、複数の筆やスポンジを使い分け、輪郭線やベタ塗りなど色鮮やかに仕上げていく。
時計職人
会場では、時計職人により、機械式時計の組み立ての精密な工程も見ることができる。ムーブメントは、ばらばらのパーツを組み合わせる微小な積み木を思わせる、シンプルなもので100個、複雑なものになると1,000個以上のパーツが必要になる。
皮革職人
数々のパーツを縫い合わせて出来上がるエルメスのバッグ。これまで、バーキン、コンスタンス、ケリーといった時代に名を刻むバッグも現れてきた。美しさと耐久性を兼ね備えたこれらのバッグは、皮革職人によりひとつひとつ丁寧につくられている。
鞍づくりの伝統技術のサドルステッチは、バッグ製作に受け継がれており、もちろん目の間で作られていたバッグの持ち手にも活きていた。糸が摩耗しないように、仕上げにハンマーで縫い目を叩き、続いて縁の部分に蝋止めを行うことで、革の断面は滑らかで艶やかな表情になり、耐久性と耐水性が高まる。
表参道ヒルズがエルメス色に染まる
イベント開催中は、表参道ヒルズが「エルメス」色に染まっている。表参道ヒルズの入口にはガラス箱の中にアトリエが。そして中央階段は「エルメスの手しごと」展のイメージが塗られている。上からみると階段の段差がなくなり絵になる仕掛けになっているので、様々な角度から見てほしい。
イベント概要
【名古屋】
会期: 2017年10月4日(水)~9日(月・祝)
時間: 11:00~19:00(最終入場は18:30)
会場: KITTE名古屋 3F JPタワー名古屋 ホール&カンファレンス
名古屋市中村区名駅一丁目1番1号
入場: 無料
【博多】
会期: 2017年10月14日(土)~19日(木)
時間: 11:00~19:00(最終入場は18:30)
会場: JR博多シティ 9F JR九州ホール
福岡市博多区博多駅中央街1番1号
入場: 無料