【TOKYO MER感想 10話】くもりのない生き方と引き換えにするもの・ネタバレあり
互いに信頼を語る言葉を掛け合うことなどなくても、バディとしてここまで来たと胸が熱くなる名場面である。
そして、喜多見が学生たちに語りかけた言葉もまた、印象的だ。
「俺たちは応援をされるためにやってるわけじゃない。どんな非難をされても構いません。だけど命を救うことには手を貸して欲しい」
この言葉こそ、新型コロナウィルス感染症と泥沼の戦いを続ける今の社会の中で、価値観や利益関係の相違から時に激しい批判に晒されながらも、懸命に対策のための情報を発信し、声を上げ続けている医療従事者の言葉そのものなのだと思う。
結果的に内通者は医学生の1人で、感染症を契機に経済的に逼迫(ひっぱく)して医大からの退学を余儀なくされ、その悲痛を椿につけ込まれたということが明かされる。
若者たちの学びの場が奪われ、経済的な弱者に真っ先に皺寄せがいく。
医療従事者を早く増やせと声高に言われても、あまりにもその土台は脆い。
これもまた、このドラマがいくつも描き出すコロナ禍の社会の写し絵である。
ここまでどんな現場でも死者を出さず乗り切っていたMERだが、今回のエピソードでそのジンクスは破られる。
死者1名と無情に表記される名前は、チーフドクターである喜多見幸太の妹であり、離婚した今は唯一の家族の喜多見涼香(佐藤栞里)