2022年2月9日 12:19
一人暮らしの母親からの電話 適当に返事していた男性が『気付いたこと』
と思った。
実家の周りは車も多く、星は見えにくいだろう。そんな中で空を見上げる母を想像する。母は、一人きりで立っていた。
九年前に父が亡くなり、母はずっと一人だ。今日も母は一人で夕食を食べ、一人で空を見上げている。今更のように気づき、奥歯がぐっとなった。
しかし母が、自分の寂しさを話す事はほとんどない。
母からの電話はいつも、私たちの事ばかりだ。
私が趣味にしている投稿が新聞に載った朝には、必ず母から電話が来る。朝一番にかかってくる電話に、「大袈裟や」と笑い飛ばす。それでも母は「よかったね」と、笑って言ってくれる。
そしてどんな話をしていても、最後には必ず孫娘達の心配をし、仕事で毎日忙しい妻を気遣ってくれる。ずっと一人きりなら、あれこれ思う事もあるだろう。しかし、母がそれを口にすることはなかった。
今日の電話でも母は、
「嫌なニュースばっかりやけど、上を向いていられるようにと思って電話してん。」
と言っていた。
切れる前には、
「上を向いて暮らしてくださいね。」
とも言ってくれた。適当な返事ばかりをしていた。空を見上げたまま、唇をかんだ。
結局、宇宙ステーションは見えなかった。