【『ファイトソング』感想 最終回】 恋が照らすもの・ネタバレあり
それは未来がもっと素敵なものになるという希望、独特のまばゆい光である。
こうして春樹と花枝は互いの気持ちを確かめ合い、物語は大団円となるけれども、それぞれの登場人物の迎えた着地も素敵だった。
恋のドアに手をかけた慎吾と凜、絶体絶命の片思いから大逆転の迫(戸次重幸)、春樹の親友として良いときも悪いときも寄り添う薫(東啓介)。そして、長年の片思いを結局告げずに春樹のマネージャーとしての仕事を全うして旅立っていく弓子(栗山千明)もまた格好いいのである。
人にはいろんな寄り添い方がある。そのどれも肯定して描く、懐の深いラストだった。
ゆるやかに流れる会話や、日常の穏やかな描写が魅力的な岡田惠和の脚本だが、今作もいかにも恋愛ドラマらしい定型に沿った展開ではなくて、ふわりと広がっては縮んだり、さらさら流れては集まりと、柔らかな心地よいテイストのドラマになった。
しかし優しいだけではなくて、岡田脚本には時に日常の裏に潜む暴力や不条理の描写がある。今作のそれは、花枝にふりかかる事故や病気の苦しみだったろうと思う。
容赦なく奪うことがある、確かに生きることは時に無情だけれども、それでも人生は光があふれて美しい。