【『初恋の悪魔』感想8話】離れても健やかにという祈り・ネタバレあり
最終章が始まる第8話は、そんな坂元脚本の醍醐味が詰まった回だった。
凶悪事件マニアで変人の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、兄の不審死を調べた結果、上司に疎まれ退職に追い込まれた総務課職員の悠日、生活安全課の刑事だが、二重人格でその不審死の真相の鍵を握る摘木星砂(松岡茉優)、警察署にいながら警察組織が嫌いな経理課の小鳥琉夏(柄本佑)。
上下関係の堅固な組織の中にありながら、そこに馴染めないまま生きている4人が連続殺人事件の謎を追う『初恋の悪魔』(日本テレビ土曜22時)。
刑事の星砂は悠日と、もう一人の人格の星砂は鈴之介と、それぞれに惹かれあっているため、3人は奇妙な三角関係になっていて、小鳥が飄々と立ち回って4人が空中分解しないように絶妙にバランスを取っている。
坂元脚本といえば、テレビドラマ『カルテット』(2017年 TBS系)の3話の名セリフ「泣きながらご飯食べたことある人は生きていけます」が有名(今回、そのシーンと同じ定食屋らしき店が登場していた)だが、今作でも食事の場面は印象的で8話はとりわけそれが際立っていた。
冒頭、鈴之介はいちごとマスカットのショートケーキを一つずつ買って帰り、まず星砂にどちらか好きな方を選んで食べてほしいと思っている(残った方を自分が食べるという目論見で、そんな無垢な浮かれ方が鹿浜鈴之介というキャラクターの何ともいえない魅力である)。