【『初恋の悪魔』感想8話】離れても健やかにという祈り・ネタバレあり
「同じケーキを二つ買う」でも十分愛情表現として良いと思うが、あなたが楽しそうに選ぶ表情が見たいという高揚が恋の純度だと思う。
結果として星砂も同じ二種類のケーキを買っていて鈴之介に選んでほしいと待っていたというオチで、キスよりもハグよりも、恋としてより深いものを示唆する描写はさすがである。
この時、鈴之介がもう1人の星砂に対して、この先離れていても会えなくても、どこかで生きてほしいと願う言葉が切なくて印象深い。
もう一つ、印象的なシーンは、星砂が悠日から渡されたカレーを食べる場面だった。
鈴之介と惹かれあうもう1人の星砂がレンジで温めておいたカレーを、入れ替わりの直後になぜそこにカレーがあるのかよく分からないままに刑事の星砂は食べる。
一口食べて、それは恋人が作った味だとすぐに気づいて涙が溢れてくる。
食べ終えてから星砂はタッパーに貼られたメモで、悠日が自分を案じてくれていること、一緒にいられないならばとせめてもの思いでカレーを託したことを察して、悠日の元に帰ろうと雨の中を走り出す。
「食べてください」は「生きてください」だと、そして理屈やどうしてよりも前にある無条件の愛おしさが満ちて溢れだす、胸にせまる美しい場面である。