【『初恋の悪魔』感想 最終話】悲しみを飛ばす風のように・ネタバレあり
Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2022年7月スタートのテレビドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
孤独からやってきた男は、ひとときの喧噪の後、再び孤独な暮らしに戻っていった。
誰かと笑い、食べて暮らす楽しさを経験した分だけ、失った悲しみは避けられないけれども、痛みをまるごと抱え込んで生きる姿は、前より美しく、強くなったように見えた。
罪の概念が壊れた殺人犯に対峙したとき、「悪魔を殺せるのは悪魔だけだ」と言って、自分自身もその境界線に足を踏みこんだけれども、結局彼は悪魔にはなれなかった。
大切な人を殺されたかもしれない怒りで、暴力的に殺人犯を裁くことも出来たのだろうけれども、その間際に友人が大声で知らせた大切な人は生きているという言葉が、彼を紙一重で悪魔にしなかった。
悪魔にはならず、愛する人は消えて、スプーン一杯分の思い出と耳かきひと匙分の願いが残った。
『初恋の悪魔』は、失った痛みと孤独をなぞり続ける物語だった。