【『初恋の悪魔』感想 最終話】悲しみを飛ばす風のように・ネタバレあり
そこに疑いも間違いも、罪悪感も存在しない。そして枠組みから外れている人々への無関心が、錆になって思考を止めてしまう。
理由など考えないまま、少年は最初に万能たる父親に指示された通りに、繰り返し殺した相手の靴を脱がせて捨てる。
盲信と無関心は弱い人々を押しつぶし、大きな問題を先送りにして、いずれ手遅れにする。
それはこの物語を終始貫いていた警告だったと思う。極上のエンターテインメントの中で深く静かにその描写を繰り返し、見ている私たちに訴えかけたその根気に、惜しみない賞賛を贈りたい。
こうして事件はほろ苦く解決し、鈴之介と悠日の間で二つの人格を行き来していた星砂は刑事の星砂に戻る。
解決後しばらく悠日と星砂は鈴之介の家に居候しているがおそらく悠日と星砂は蛇の星砂を失った鈴之介の喪失感を、鈴之介は事件が引き起こした暴力や兄の死で傷ついた2人を思いやって共に生活しているのだろうけれども、傷がある程度癒えたであろうタイミングで鈴之介は2人を突き放し、2人もまた踏ん切りをつけて鈴之介の家を出ていく。
居候中は、食事は出されるまま、終日パジャマ、靴下は脱ぎっぱなしという緩さがリアルで可笑しい。