【『初恋の悪魔』感想 最終話】悲しみを飛ばす風のように・ネタバレあり
だ。
1人、2人の友人であっても、価値観を共にできる誰かがいれば、孤独の悪魔からは逃げられる。でも、そんな誰かが今はいなくても、慈しまれた記憶と言葉がスプーンひと匙あれば、きっと人は悪魔にならないでいられる。
そして耳かきひと匙分の希望を抱いて、その時が来れば誰しもが誰かの『思い出のひと匙』になれるのだと思う。
偏屈だが、常に切なさが全身に詰まった鈴之介を演じた林遣都、穏和だけれども情熱を秘めた包容力のある悠日を演じた仲野太賀、二つの人格をシームレスに往来する難役を2人分以上に魅力的に演じた松岡茉優、弱く見えるけれどもしなやかで、息詰まる展開の癒しになった小鳥琉夏を演じた柄本佑。
メインの4人もバイプレーヤーもゲストも、終始『この人でなければできない』に満ちていて、素晴らしい見ごたえだった。
今のご時世、これだけの複雑さを提示して、集中力を保って見なければ追えないドラマは、決して多数派のものではないのだろう。また、この稀代の名脚本家にとって、今のテレビドラマは媒体として制約が多すぎるのではないかと杞憂めいた思いもある。
それでも、誰かの孤独な夜に、泣きたくても傍らに誰もいないようなその時に、この人の紡ぐ言葉が福音のように届くその可能性があるとしたら、やはりテレビドラマなのだろうと思う。