「もういないんだ」胸の奥にあるぽっかりとした空洞を埋めるのは?
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
「そうか、君はもういないのか」と思うとき
「そうか、君はもういないのか」
作家の城山三郎氏が妻の容子さんが亡くなった後に書いた随筆を読みました。
容子さんとの出会い、結婚生活を書いたいくつかの未完の原稿を次女の井上紀子さんの手によりまとめた随筆です。
最愛の人が、本当に最愛であったことを知るのは、失ったときなのかもしれません。
城山氏は容子さんと出会ったとき、「間違って、妖精が天から妖精が落ちてきた感じ」と思い、その思いは結婚生活を通して変わることがなかったそうです。
容子さんに先立たれ、城山氏はその現実を心の中にのみ置いていたと、次女の井上紀子さんは語ります。
お葬式で喪服を着ず、お墓参りもせず。そして自宅に帰ることなく、ずっと仕事場で寝起きしていたそうです。