【『アトムの童(こ)』第7話感想・考察】宿敵に手を差し伸べる主人公 男同士の友情が心をえぐる
ドラマ好きなイラストレーター、ゆう。(@yamapyou)さんによるドラマコラム。
2022年10月スタートのテレビドラマ『アトムの童(こ)』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。
毎回ジェットコースターのような怒涛の展開を見せる『アトムの童(こ)』だが、第7話は宿敵であるSAGASの興津(オダギリジョー)の立場が逆転するという非常に濃い回となった。
次のステージに進もうとする那由他と隼人
社名を『アトムの童』にして新たなスタートを切った『アトム玩具』は、従業員も増え、かつての活気を取り戻していた。
若い新人と、アトム玩具からのファミリーである八重(でんでん)との不慣れなやりとりも、見ていて微笑ましい。
ある日、社長・海(岸井ゆきの)に「大事な話がある」と、召集される社員たち。その話とは、ゲーム事業が軌道に乗ったこともあり、満を持しておもちゃ制作を再開するという内容だった。
そんな中、那由他(山﨑賢人)と隼人(松下洸平)はゲームクリエイター交流会での、ジョン・ドゥのファンだという、ティムと出会う。
彼と意気投合した那由他と隼人は、シアトルで新たなゲームを作るという作りに次のステージを見出す。
『アトムの童』を離れたくないという思いはあるものの、「次のステージに進みたい」と海に相談。複雑な思いを抱きつつも、海は彼らの新たなチャレンジを応援し退職を受け入れた。
今まで二人で様々なものを作り上げてきた那由他と隼人が、「ゲームを作りたい」という想いで通じ合う。二人の絆を感じる胸が熱くなる展開であった。
宿敵に手を差し伸べる主人公
おもちゃ制作の再開に向けて、動き出していたアトムの童だったが、制作に必要な塗料が入手できない問題が浮上した。
塗料の取引先であった会社が、株主の意向で軍事産業に方向転換を強いられていたのだ。
その株主とは大財閥の『宮沢ファミリーオフィス』。利益と関係なく、自分たちの思い通りに会社を作り替えてしまう厄介な集団である。
同社の社長・宮沢沙織(麻生祐未)は、興津(オダギリジョー)率いる『SAGAS』の株も大量取得し始め、ゲーム事業を買収しようとしていた。
『SAGAS』が挽回するにはアトムロイドの技術を使い、e-sportsの競技となる新しいゲームを作らなければならない。興津はアトムの童に助けを求めに行った。これまで散々ひどいことをした相手に頭を下げに行くという興津の気持ちも察しがつく。
助けを求めながらも、プライドを捨てきれていない発言がアトムの童の社員たちを不快にさせていた。
もちろん、アトムの童のみんなの答えは「NO」。
しかし、那由他だけは違った。
理由は『アトムの童』のためだった。『アトムの童』の技術を取り返すため、決して『SAGAS』の味方につくわけでは無いが、手を貸したいと言った。
不満・不平が出るなか、那由他の姿はこれこそドラマの主人公だと思う。
正義の主人公は宿敵にも手を差し伸べる。散々ひどいことをされ、嫌がらせを受けたとしても、見捨てない那由他の信念となっているものは『アトムの童』を守ることなのだ。
信念を貫くためにブレない主人公はやはり、かっこいい。ブレないからこそ信じることができ、応援したいと思えるのだ。
山﨑賢人と松下洸平の決裂、再び
那由他が『SAGAS』を手伝うことになり、シアトル行きのチケットを見つめながら悲しい表情を浮かべる隼人。夜の大雨というのも、隼人の心情をうまく演出していた。
那由他が『SAGAS』へ向かい、大企業の技術に目を輝かせていたとき、隼人が別れを告げにやってきた。
那由他はシアトルに行くのが2週間遅れるだけだと話すが、隼人はそれに強く反論した。
「お前は本当わかってないな、自分のこと!俺はお前をよく知ってる」
那由他はのめり込んだらとことんやる性格だ。きっと株主総会で見せるデモでは満足できず、ゲームが完成するまで何年も『SAGAS』にいるだろう。
隼人にはそれがわかっていた。だから行かせたくなかった。
前半の意気投合し、共に新しいステージへ進もうとしていた二人の姿があったからこそ、その対比も相まって二人の決別がとてつもなく苦しいものとなった。
そして、このシーンに見覚えを感じた人はいないだろうか。ドラマの最初の頃、『SAGAS』にいた隼人に那由他が一緒にゲームを作ろうと誘ったときである。
今や完全に構図が逆転してしまっていた。歩道橋というのも当時と重なる。
別々の方向から来た二人は、中間地点で交わるも、またそれぞれ別の方向へ行ってしまうのか。
そんなことを思わされるラストシーンであった。対立する二人、今後の展開がさらに楽しみである。
『アトムの童(こ)』/TBS系で毎週日曜・夜9時~放送
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[文・構成/grape編集部]
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