【『ファーストペンギン!』感想9話】夜明けはもうすぐだ!・ネタバレあり
もつれあう問題に、これでは衰退する一方の漁業に打開の手はないのかと、見ていて暗澹たる気持ちになってしまう。
そんな中、現場の漁師たちのリーダーとして自分でなくても波佐間がいればいいのではないか、戻る必要はないんじゃないかと躊躇する片岡を、永沢は汐ヶ崎に連れ戻そうと腐心する。
永沢は、波佐間と一緒にいる時の従いっぱなしの和佳が好きになれない、和佳らしくないと懸命に片岡に訴えかける。
ここまで、この作品では『その土地』で『その人たち』が生きていこうとする姿を描いてきた。
故郷の衰退を憂いながらなすすべのない中年世代、都会に出たけれどもやむなく戻ってきた若者、ここで家庭を持つ決断が今は難しい若者、一次産業への希望をもってやってくる移住者。
立場や経歴ではなく、本音でぶつかり合っても容易には壊れない関係で生きられるなら、自分らしさを発揮しながらより良い未来を目指せるならば、その人たちが、その土地で生きていく理由としては十分なのではないか。
永沢が片岡を引き戻そうと熱く語った言葉には、そんな希望が込められていると思った。
最終回直前まで、息のつけない困難続きではあるけれども、このドラマが『10年前』から届けられている物語だということは、繰り返し冒頭のナレーションで語られている。