【『VIVANT』感想3話】一つの画面に違和感なく「二人の男」を同時に表現する堺雅人の円熟
とねぎらう野崎という男も、捨てられない情を抱えて生きているのだろう。
そういう男だからこそ、ドラムのような青年が危険を顧みず尽くすのだと思う。
ド迫力のモンゴル国境のシーンでは、視聴者としては敵役ではあるけれども、自分の国を守るために心身を捧げているバルカ警察のチンギスと、異国の刑事への友情に生きて母国に居られなくなるドラムのそれぞれに想いを馳せた。
砂が舞うバルカ編とは打って変わって、東京では緻密かつスピーディな誤送金問題をめぐる作戦行動が繰り広げられる。
興味深いのは、初回から時折挟まれている乃木の二重人格が、はっきりと独立した二つの人格だと示唆するシーンが幾つか見られたことだ。
もう一人の自分を、乃木は「エフ」と呼び対話する。口論したり、励ましたりもする。名前があるということは、他者と認識しているということだ。
エフと呼ばれる男は、2話目では野崎が乃木に気があるんじゃないかと忠告したり、今は乃木が薫に片思いしていることを頻繁に気にしていて、乃木にちょっかいをかけている。
一見切れ者のようだけれども、人の心の機微にはちょっとポンコツ気味のようだ。大人というより、その言動は少年めいている。