【『VIVANT』感想8話】役所広司・堺雅人・二宮和也 3人が描き出す愛の綻び
二宮和也と堺雅人という、まさに今が円熟の俳優二人が、その複雑な距離感を隅々まで神経の行き届いた演技で表現している。
DNA鑑定の結果を知り、鉄格子を挟んで向かい合い絶句する父と息子、それを心許なげな表情で凝視するノコルの場面は、冷たい水が溢れるような哀しい情感に満ちていた。
主人公が追う敵の幹部が親であるというストーリー自体は定石とも言えるが、今作は、その父親であるノゴーン・ベキの複雑な潔癖さが印象に残る。
オマージュとして共通項が指摘されている『スター・ウォーズトリロジー』はその最たる作品である。
どんなに組織に役立つ人物でも、横領をはたらき私腹を肥やす者には非情な処分を下す。一方で情報漏洩という重大な裏切りを犯した者でも、そこに至るまでに組織への誠意が感じられるなら許す。
乃木に対しても、同僚を裏切ってでも息子が会いに来た喜びよりも、息子が自分を用心深く欺きながらも根底では信念を貫いていることを評価しているかのようだ。
遠い過去に母国から捨てられ、妻子を失った男は何を恨み、何を理想としているのか。
それは残り少ない物語の中で、きっと明らかになるのだろう。
常に不安定で見通しのきかないストーリーの中で、一つだけ、これは確かだと感じることがある。