【『VIVANT』感想9話】父と息子の絶望の人生を繋ぐ林遣都の演技
それを思うと切なくなる。
もうこれは社会現象と言ってもいいだろう。日曜の放送直後から一週間、途切れることなく考察がSNSを賑わせ、次回が待ち遠しいと多くの人が日曜を待ち望む『VIVANT』(TBS系日曜21時)。
最終回を一週間後に控え、9話では乃木憂助の父にしてテロリストの指導者、ノゴーン・ベキ(役所広司・回想シーンは林遣都)の過去とテロ組織テントの最終的な目的が明らかになる。
父の晩餐に訪れた憂助に語られたのは、祖国に捨てられ、大切な息子を奪われ、愛する妻を拷問の果てに死なせた男の、絶望という言葉でも表せない凄惨な日々だった。
だが、全て失い一度は魂が死んだ男は、一人の赤子との出会いで生きる理由を得る。自分を救ってくれた仲間と、託された赤子、つまりノコル(二宮和也)のために、ノゴーン・ベキはテロ集団テントの指導者として武装と暴力の世界に身を投じたのだった。
若き日のノゴーン・ベキ、乃木卓を演じるのは林遣都。妻の乃木明美は高梨臨が演じ、祖国から遠く離れた地で国に見捨てられた若い夫婦の悲しい運命を描きだす。
とりわけ、殺さねば殺されるだけなのだと強盗団相手に迷いなく銃を撃ち続ける林遣都の、覚悟の表情は鳥肌がたつほどに美しかった。