2023年10月6日 16:49
【『大奥 Season2』感想1話】鈴木杏と村雨辰剛が描き出す小さな理想郷
将軍もまた女性が務める中で、女将軍が跡継ぎを生むための大奥は男ばかりが集められるようになるが、男女が逆転したとしても、いや逆転しているからこそ、そこには悲哀が満ちているのだった。
シーズン1で、原作のエッセンスを余すことなく表現した緻密な脚本と、圧倒的な映像美、俳優陣の熱演で好評を博したNHKドラマ10『大奥』。
シーズン2は八代将軍吉宗(冨永愛)の死からおよそ20年、いわゆる田沼時代と呼ばれる時代から始まる。
吉宗から赤面疱瘡の撲滅を託された将軍の側用人・田沼意次(松下奈緒)は、大奥での医学研究のために平賀源内(鈴木杏)に命じて長崎・出島で蘭学者を探させる。
源内がこれと見込んで連れてきたのは、長崎で外国人と遊女の間に生まれた金髪碧眼の吾作(村雨辰剛)という名の青年だった。
その容姿で差別を受け続け、苦難の多い半生にもかかわらず、吾作は「人の役に立ちたい」と大奥に入り、新たに『青沼』という名で蘭学の講義を始める。
※写真はイメージ
医療編と呼ばれるこのパートは、男女逆転の大奥の物語の中でもやや異質な光を放っている。
ここで描き出されるのは、男女の役割が逆転した世界ではなく、男女の役割の境界線そのものがない世界である。