【『不適切にもほどがある!』感想6話】価値観の変化を越えて問う人生の痛み
それにしても、小川とサカエのひそひそ話の最中に寝ぼけて現れた純子は何も聞かなかったのだろうか。
純子は、令和で娘の天命を知ってもしばらく知らないふりを通した、小川市郎の娘である。
気っぷのよさも愛情深さも、それを素直に言えないところも、小川から受け継いだ娘である。本当に小川とサカエの態度から何も察しなかったのかは、この先に向けて気になるところだ。
知ってしまった娘の寿命に親としてどう向き合うか。胸に迫る展開ではあったが、宮藤官九郎らしく容赦ない笑いと心が緩むような優しいエピソードも随所に散りばめられている。
令和で制服姿の純子を見て「あばずれてる!」と感極まって泣くゆずる(古田新太)の姿にはもう錦戸亮が重なって見えるし、半ばオワコン化しつつあるベテラン脚本家の代表作に、ギャングが暗躍する公園が舞台のドラマを自虐気味に挙げるところも容赦ない。
そして、自分が母の寿命を縮めたのではないかという不安と、シングルマザーの道を選んだのは正しかったのかという迷いに揺れる孫の渚が、純子の率直な言葉に救いを得るラストの3分は、思わず目頭が熱くなった。
張りめぐらした伏線の鮮やかな回収もクドカンだけれども、不意打ちでこういう優しさを仕掛けてくるのもまた、クドカン作品の魅力である。