【『不適切にもほどがある!』感想9話】笑いも涙も毒も食らわば皿まで
父、娘、夫、後輩、それぞれの立場で彼らは純子の人生を想う。
それぞれの目線だけれど、そこに体温のある一人の魅力的な女性が浮かび上がる。
何もかも上手くいった恵まれた人、パワハラした人、Z世代、老害。
それは『そんなんだから』という無責任な言葉と、一面的なレッテルで分類され評価される薄っぺらさとは対になるものだ。
それにしても、娘を傷つけられた怒りにまかせて父・ゆずるが歌い出すのはミュージカル『コーラスライン』の名曲『ONE』風の何かだし、歌詞にあろうことか『ワンチャン』などとぶっ込むし、途中で心臓病のゆずるは倒れ込む。
倒れ込む背中に渚がかけたガウンを跳ね飛ばして更にキレキレに踊るゆずる、痛々しくも救急車に収容されてもなお歌うゆずるに、小川がかけた言葉は…。
「ゆずるくん…ジェームス・ブラウンみたいになってる!(おそらくソウルの帝王・ジェームス・ブラウンのマントプレイを指しているものと思われる)」
これこそ宮藤官九郎の『わかるやつだけわかればいい』名場面の一つだと思う。
いつにもまして、怒るところか笑うところか泣くところか爆笑するところか、よく分からない混沌としたこの最高の一幕に、クドカンのドラマもまた安易な分類なんか受け付けない無二のものだと痛感するのだった。