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調理でCO2排出ゼロ! 水素で作る究極の『エコラーメン』に迫る【独自取材】

grape
撮影:grape編集部
私たちの日々の生活で、車の排気ガスや、プロパンガスを使った調理などの際に出る二酸化炭素。

地球温暖化の対策として、世界中で二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を減らす『脱炭素』の取り組みが進んでいます。

工業都市の神奈川県川崎市では、調理時の『脱炭素』を実現したユニークなラーメンが登場。同市のほか、地元企業や飲食店、学生などが手を組み、官民一体となって開発したものです。

grapeは2025年11月2日、『脱炭素ラーメン』がお披露目されたイベント『みんなの川崎祭』の模様を取材。関係者たちに調理の秘密や開発背景などを聞きました!

環境に配慮した『脱炭素ラーメン』調理の仕組みを取材


ラーメンを作るのは、同市を中心に店舗を構える老舗『元祖ニュータンタンメン本舗』です。同店のタンタンメンは、『川崎のソウルフード』として広く知られています。

まずは、イベントで販売された『脱炭素ラーメン』のビジュアルからご覧ください。


机に置かれる『脱炭素ラーメン』の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

トウガラシを生かした赤いスープとひき肉が食欲をそそるでしょう。

一見、おいしそうなタンタンメンですが「炭素を使わずに作られているってどういうこと?」と首をかしげる人もいるかもしれません。筆者もその1人でした。

実は、環境に配慮した仕組みのカギは調理機器にありました。調理に使われていたのは、一般的なプロパンガスではなく…。

水素を活用する調理機器の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

二酸化炭素を出さない水素を活用する機器だったのです!

機器を設置したのは、同市の大手機械製造メーカー、三菱化工機株式会社を中心とする複数の企業。

水素の貯蔵や運搬、さらには水素調理が可能なシステムを導入することで、調理時の二酸化炭素の排出量はゼロになるといいます。

水素を生かして作るラーメンは、『水素ノー炭炭(タンタン)メン』と名づけられました。


地球温暖化対策を目指し、企業の技術力が結集した画期的なメニューと言えるでしょう。

『脱炭素ラーメン』ののれんの写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

水素で作るタンタンメンクセになるおいしさにうなる!


味はスパイシーで、クセになるおいしさ。トウガラシをベースに、ニンニクが効いたピリ辛スープが中太のちぢれ麺にしっかりと絡み、絶品でした。

『元祖ニュータンタンメン本舗』の調理スタッフを取材すると、「ガスで調理をする時と味はまったく同じ。ガスで点火する時より匂いも少ない。風味は変わらず、ただ環境に優しくなっただけ」と話してくれました。

ラーメンを調理するスタッフの写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

『水素ノー炭炭メン』をすすっていた女性を取材すると「『元祖ニュータンタンメン本舗』にはよく行くのですが、いつも通りおいしいです。いや、環境に優しいと聞くと、いつも以上においしく感じますね」と破顔。


一緒に訪れた女性と、満足げに食べていましたよ。

ラーメンをすする女性たちの写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

当日の『脱炭素ラーメン』のブースには来場者の列が絶えず、盛況のうちに幕を閉じました。

同市によると、市内のイベントなどで再び販売する可能性もあるとのことですよ。

『脱炭素ラーメン』を販売するブースの写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

実は、地元企業を巻き込む『脱炭素ラーメン』の取り組みは、1人の若者の何気ないひらめきから始まったのです…。

水素を生かした異例の『脱炭素ラーメン』実現した背景に迫る

発案したのは、川崎市高津区溝口地域で『脱炭素』の取り組みを進める『脱炭素アクションみぞのくち(以下、みぞのくち)』の活動メンバーで、大学生の田村奈々さんです。

『みぞのくち』は、2050年の二酸化炭素排出実質ゼロを目指す同市が2022年に立ち上げました。

田村さんは2025年6月、『脱炭素』を身近に感じられる取り組みを考える『みぞのくち』のワークショップの中で、調理時に炭素を出さないラーメンの開発を考案。

アイディアに込めた思いについて、田村さんはこう話します。


ラーメン屋でアルバイトをしていたので、『脱炭素』とラーメンを組み合わせたら面白いと思ったんです。

なじみのあるラーメンによって、堅苦しいイメージのある『脱炭素』を、身近に感じてもらえるのではないかと考えました。イベント会場で語る女性の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

若者ならではの田村さんの柔軟な発想に、ワークショップに同席していた同市シティプロモーション推進室課長補佐の都築直也さんが「面白い」と共感。すぐさまアイディアの実現に乗り出しました。

開発に協力した三菱化工機と『ニュータンタンメン本舗』の思い


同市は、水素を使ったちゃんこ鍋の提供実績がある三菱化工機と、同市を代表するラーメン店の『元祖ニュータンタンメン本舗』に協力を依頼しました。

三菱化工機企画部主席の山田宏一さんは、『脱炭素ラーメン』の取り組みの意義をこう語ります。

会社の理念として掲げる『循環型社会』の実現に貢献できる、と考えました。

川崎の地で90年以上経営を続ける中で、有効活用できるエネルギーを創り出す『創エネ』の考え方を大切にしています。


エネルギーを生み出す実証実験の場としてもありがたいですね。

協力した裏側には、エネルギーの有効活用を模索しながら環境課題の解決を目指す三菱化工機の熱い思いがありました。

学校での給食提供など、積極的に地域貢献に取り組む『元祖ニュータンタンメン本舗』も「ソウルフードとして親しまれるようになったのは市民のおかげ。その感謝を示したい」と快諾。

機器の調整や試作などを重ね、学生の何気ないアイディアはわずか4か月ほどで形となったのです。

ラーメンをアピールする幕の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

ラーメンの看板の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

学生のアイディアをわずか4か月で実現川崎市の職員が感じること


速いスピード感でアイディアを具現化できた要因について、同市推進室担当課長の朝倉千亜希さんはこのように推察します。

工業地帯として発展してきた川崎は、多くの人が訪れる街でもあり、他人の意見を受け入れやすい土壌があるのかもしれません。

イベント会場で語る女性の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

多様な人が暮らす川崎には、他人のアイデアをすぐに受け止め、形にしていく柔軟さが息づいているのかもしれませんね。


『脱炭素ラーメン』の発起人の1人である都築さんに話を聞くと、次のように答えてくれました。「環境をよくする」という意味では、この日に私たちができたことは、ほんの少しかもしれません。

それでも、環境に配慮したラーメンを食べることで、脱炭素の取り組みに『おいしく貢献ができた』と実感してもらえたのではないでしょうか。

川崎が、若い人たちが新しいことに挑戦できる街だということも知ってもらえたら嬉しいですね。

イベント会場で語る男性の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

『脱炭素』と聞けば小難しく感じますが、身近な『食』を通じて環境について考えるという発想は、地球温暖化対策のヒントと言えるかもしれません。

ラーメンを手にする女性の写真(撮影:grape編集部)
撮影:grape編集部

行政と地元企業の力、そして若い発想が合わさって実現した『脱炭素ラーメン』。

この先、川崎から『おいしくて環境に優しい』取り組みの循環が、全国に広がっていくかもしれませんね…!

[文・構成・取材/grape編集部]

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