駅に大量に届く落とし物 駅員が発案した、クリスマスのまさかの活用法が?
クリスマスを目前に控える2025年12月19日現在。
街中を見渡すと、にぎやかなツリーやイルミネーションといった装飾が目を引くでしょう。
そんな中、福岡県福岡市のJR博多駅構内に設置された、斬新なクリスマスツリーが、利用客たちの視線を集めています。
意外な装飾が施されたクリスマスツリーが…こちらです。
提供:JR九州
右は一見、よくあるクリスマスツリー。一方、左のツリーはあまり見慣れないデザインでしょう。
いったい、利用客の目を引く斬新なポイントは、どこにあるのでしょうか。
右にある高さ4mほどのツリーに近づいてみると…。
提供:JR九州
オモチャやキーホルダー、家電製品などが飾られています!
実はこのツリーには、同年夏に同駅で拾われ、落とし主が見つからなかった遺失物が装飾に使われているのです。
提供:JR九州
帽子やぬいぐるみといったカラフルなアイテムも多く、意外にもクリスマスツリーの雰囲気になじんでいる点が面白いですよね。
となると、左の高さ3mほどのツリーに使われているアイテムも、想像できるかもしれません…。
提供:JR九州
こちらは、駅に落ちていた傘を組み合わせたツリーなのです!
緑や黄色のペンキを塗ることで、ツリーらしい色合いを表現。
シルエットは見事な三角形で、傘を再利用したとは思えないほどの出来栄えですよね…。
遺失物を再利用したクリスマスツリー企画した背景をJR九州に取材
筆者は、遺失物を生かしたクリスマスツリーを設置した九州旅客鉄道株式会社の担当者に、電話取材を実施。
今年、初めて企画した理由や、利用客からの反応などについて話を聞きました。
――遺失物を活用したクリスマスツリーを考案した背景について教えてください。
博多駅で勤務する社員のアイディアです。駅には日々、多くの遺失物が届きます。
遺失物を『サステナブル』に再利用し、駅の利用客や地域の方たちにクリスマスの雰囲気を楽しんでもらえたらと思い、企画しました。
飾りつけには、地元の保育園児にも協力してもらいましたよ。
――ツリーの装飾に使ったのは、どういった遺失物ですか。
2025年7~8月の間に、博多駅に届いた約200点の遺失物です。
キャップやハット、眼鏡、サングラスといったファッションアイテムのほか、加熱式タバコやぬいぐるみ、キーホルダー、財布、ハンディファンなどを使いました。
――ツリーを装飾する上で、特にこだわった点や大変だった点はなんでしょうか。
透明な傘が多かったため、ツリーらしく見え、なおかつ骨組みが目立たないよう、ペンキで染めて色の統一感を出すことにこだわりました。
傘を重ねて組み立てる作業は、特に苦労しましたね。
また、園児に描いてもらった傘は見えやすい足元に配置しました。ツリーの上部に飾った『星』の装飾品も手作りです。
駅の利用客に物を大切にする意識を持ってもらい、遺失物の削減につなげる『SDGs』を意識した取り組みとのこと。
駅には日々、数えきれないほどに大量の遺失物が届きます。
提供:JR九州
多くの落とし物と向き合う駅員ならではの現場目線と、発想力が光る企画と言えるでしょう。
「想像以上」と好評の『落とし物ツリー』駅員に場所をたずねる人も
同駅で『落とし物ツリー』がお披露目されたのは、同年12月10日です。
担当者は、ツリー設置後の利用客らの反応を、次のように明かします。
「想像以上に大きいツリーだった」と驚かれる人がいました。
駅員らに「忘れ物の傘でできたツリーを見に行きたい」とたずねる方も多く、ビックリしていますね。
多くの落とし物を生かしたツリーは、予想以上の反響を呼んでいるようです。
博多駅に、クリスマスらしい温かな雰囲気をもたらしていることが伝わってきますね。
JR九州がツリーで伝えたいこと「忘れ物を確認する意識を持って」
最後に、遺失物を生かしたクリスマスツリーを通じて伝えたいことを聞くと、このように答えてくれました。
ツリーをきっかけに、電車を降りる時や、駅のトイレを出る際に、忘れ物がないか再確認する意識を持ってもらえれば嬉しいです。また、忘れ物をした際は、JR九州のLINEアカウントや、近くの警察署などを通じて問い合わせてほしいですね。
展示期間後には、装飾に使った落とし物を配布する予定なので、ゴミになるはずだった物が、再利用してくださる方たちの手に渡れば幸いです。
遺失物を装飾したツリーの展示期間は同月25日まで。展示終了後には、飾りつけに使用した遺失物を、必要とする利用客に配布するとのことです。
見た目も楽しい『落とし物ツリー』をきっかけに、駅を後にする前の『ひと確認』や、物を大切にする意識が広がっていくかもしれませんね…!
[文・構成・取材/grape編集部しぶちゃん]