家の前で通行人が転倒! 雪かきしなかった住人は悪いの?弁護士の回答は…
朝、カーテンを開けると一面の銀世界。
雪景色は美しいものですが、その後に待っている『雪かき』を思うと、つい溜め息が出てしまう…という人も多いのではないでしょうか。
「寒いし、腰も痛くなるし、このままでいいか…」と放置してしまった翌朝に、家の前で、誰かが足を滑らせて転倒し、救急車で運ばれてしまったとしたら…。
「あなたが雪かきをしなかったせいだ!」と責められ、治療費や慰謝料を請求されたらどうしよう。
そんな不安が頭をよぎります。
果たして、家の前の雪かきは、住人の法的な義務なのでしょうか。
弁護士「公道であれば、住民に法的義務はありません」
家の前の雪を放置して事故が起きた場合、住人は責任を負うのでしょうか。
大阪府大阪市で、まこと法律事務所を運営する北村真一弁護士にうかがいました。
――家の前の雪かきをしなかったせいで通行人が怪我をした場合、住人の責任になりますか。
結論からいうと、その場所が『公道(道路や歩道)』であれば、住人が損害賠償責任を負う可能性は極めて低いです。
なぜなら、公道の管理責任は、原則として国や自治体(市町村など)にあるからです。
法律上、近隣住民に『公道の雪かきをする義務』までは課されていません。
そのため、雪かきを行わなかったこと自体が違法となることは、基本的にはありません。
――では、どんな場合でも責任は問われないのですか。
いいえ、注意が必要なのは、事故が起きた場所が『私有地』だった場合です。
・自宅の敷地内(玄関アプローチや駐車場など)。
・店舗の入り口や私有地の通路。
こうした場所で、積雪や凍結を放置し、誰かが転倒して怪我をした場合は、所有者としての管理責任(民法上の『土地工作物責任』)を問われ、損害賠償を請求される可能性があります。
自分の敷地内に関しては、『安全に通行できる状態にしておく義務』があるのです。
※写真はイメージ
――では、家の前の道路であれば、どんな場合でも責任を問われないのでしょうか。
いいえ、例外もあります。
注意が必要なのは、住民側が『人為的に危険な状態を作り出した』と判断されるケースです。例えば、以下のような行為は危険です。
・早く溶かそうとして道路に水を撒き、それが凍結してツルツルの状態になってしまった。
・雪かきをした雪を道路上に積み上げ、通行の妨げになるような障害物を作ってしまった。
このように、何もしなかったのではなく、『危険を招く行為』をした結果として事故が起きた場合は、不法行為として責任を問われる可能性があります。
よかれと思ってやったことが裏目に出ないよう、雪の捨て場所や処理方法には十分な注意が必要です。
法律の義務はなくとも、心の義務として
法的には、家の前の公道を雪かきする義務はありません。
しかし、だからといって『知らんぷり』でいいのかというと、それはまた別の話かもしれません。
雪かきは、自分だけでなく、そこを通る子供やお年寄り、郵便配達員など、地域のみんなの安全を守るための『思いやり』の行動です。
※写真はイメージ
『義務だからやる』のではなく、誰かが怪我をしないようにという気持ちでスコップを握る。
そんな助け合いの心が、寒い冬の道を、少しだけ温かくしてくれるのではないでしょうか。
[文・取材/ことのは構成/grape編集部]