【考察】戸田恵梨香の『孤高の演技』が… シュークリームを食べた時の言葉が引っ掛かる『リブート』2話
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2026年1月スタートのテレビドラマ『リブート』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
シュークリームを作るのに必要なのは、卵、バター、牛乳、砂糖、小麦粉、バニラビーンズ、場合によっては生クリーム。
バニラビーンズは少し特殊な材料だが、基本は手に入りやすいものばかりだ。
誰にでも手に入る材料で、優しい味を組み立てる。シンプルな分、技術に誤魔化しはきかない。
一方、組織のトップだけが呼ばれて振舞われる食事会で供されるのは、フォアグラ、トリュフ、イセエビなど、見るからに希少で豪華なものだ。
ドラマの中で繰り返される二つの食のシーンの対比が印象的だ。
前者は癒し慈しむ食。そして後者は、生殺与奪の食。
二つの両極端の狭間を、ドラマ『リブート』(TBS系)の主人公はさまよっている。
戸田恵梨香は、孤高の演技者
商店街の片隅で小さな洋菓子店を営む早瀬陸(鈴木亮平)は、行方不明になっていた妻・夏海(山口紗弥加)の遺体が発見されたことをきっかけに、巧妙に仕組まれた冤罪に巻き込まれてしまう。
このままでは逮捕されていずれ死刑という危機の中で、早瀬の前に現れたのは幸後一香(戸田恵梨香)と名乗る女だった。一香は早瀬に、生き抜くために顔を整形し、刑事の儀堂歩になる(=リブートする)ことを提案する。
2話まで見終えてつくづく思う。顔を変えて他人に成り代わって真犯人を捜すというこのドラマの設定は、確かに奇抜なものだ。
しかし、そこで生じた状況に感じる居心地の悪さそのものは、決して奇抜なものではない。
この数年の生成AIの急速な普及によって、画像や動画上で誰かが誰かに成り代わって巧妙に嘘をつくという状況は、現実に私たちを浸食しつつある。
いずれ画像や動画は安易に信用できないものになるだろうという漠然とした予感に、今作につきまとう『本当にこの人物は、もとからこの人物なのか?』という不安は見事に重なっているのである。
2話は冷静な言動から透けてみえる一香の感情の揺れ、悲しみや怒り、安堵を絶妙なコントロールで表現する戸田恵梨香の演技が印象深かった。
戸田恵梨香は、孤高の演技者だと思う。注意深く分析し、咀嚼し、自分と役の間に繊細なアウトラインを引く。
その役に向き合うストイックな過程の先に、幸後一香という複雑な女の体現がある。
果たして幸後一香が『もともと幸後一香』なのか、それとも誰かがリブートした存在なのか、早くも視聴者の考察が白熱している。
個人的には、一香は早瀬夏海ではないかと推測している。
前回、橋の上でシュークリームを食べた一香は嬉しそうに笑っていた。スイーツを食べているときだけは、嫌なことを忘れられると言っていた。
儀堂(=もとの早瀬陸)の記憶の中の夏海もまた、ケーキを食べて幸せそうに笑っている。その笑顔が繋がっているように思えてならない。
もう一つ引っかかるのは、一香が儀堂に訴えかけた「粘り腰が早瀬の取り柄だ、店を守るお母さんが言ってた」という言葉である。
小さい店とはいえ、商売人として強さと覚悟を持つ早瀬の母・良子(原田美枝子)が、客の一香相手に、そのような商売の舞台裏を見せるような言葉をかけるだろうか。
さらに今回の一香が話した合六と十億の経緯が真実であれば、合六はまだ夏海を探している最中で、殺害には手を下していないということになり、早瀬陸を冤罪に陥れる理由がなくなってしまう。
誰が早瀬陸を冤罪に陥れようとしたのか、誰が捜査上で偽の証拠をでっち上げたのか。
消えた十億の行方は案外、警察内部に繋がっているのかもしれないと思う。
いずれにしても、いわくありげな儀堂の妻の様子といい、儀堂を試しつづけるような合六の態度といい、謎はあまりにも多い。
誰がどんな目的を持っているのか、結局見た目や語られる言葉だけでは分からないのなら、最後に残るのは『誰が実際に何を行動したか』になるのだろう。
儀堂がぎりぎりの決断のときに信じたのは、彼女にとって利などないのに、シュークリームのレシピを母と息子に伝えてくれた一香の誠意だったのだ。最初の会食では暴力を目の当たりにしたショックで嘔吐した心優しい男が、二度目は嘔吐せず耐えた。
それを苦難を耐え抜く覚悟と見るか、暴力への馴れと見るか。
ドラマはまだ始まったばかりだ。
[文/かな構成/grape編集部]
かな
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